ハンガリー国家保衛庁

ハンガリー国家保衛庁（ÁVH）とは

ハンガリー国家保衛庁（Államvédelmi Hatósága, ÁVH）は、1945年から1956年まで存在したハンガリーの秘密警察機関です。当初はソビエト連邦の秘密警察の付属機関と見なされていましたが、1948年から1953年にかけて行った一連の粛清の残虐性により、独自の悪評を得ることになりました。

歴史

ÁVHは、第二次世界大戦後のハンガリーにおける共産主義政権の確立と維持のために設立されました。その前身は、1945年に設立されたブダペスト警察本部の政治部（PRO）であり、その後、ハンガリー国家警察の国家保衛部（ÁVO）を経て、1948年に内務省の管轄下にある国家保衛庁（ÁVH）となりました。

1953年にスターリンが死去すると、ナジ・イムレが首相に就任し、穏健的な改革を進めました。その結果、1953年から1955年の間、ÁVHの活動は徐々に抑制されました。しかし、1956年のハンガリー動乱において、ÁVHは市民の弾圧に深く関与し、多くの犠牲者を出しました。動乱後、ナジ・イムレの革命政府によってÁVHは廃止されました。

後継者のカーダール・ヤーノシュは、ÁVHを復活させようとはしませんでした。これは、カーダール自身が過去にÁVHによる拷問を受けた経験を持つことが影響していると考えられます。ただし、1956年動乱後のハンガリーにおいては、ソビエトの秘密機関が直接的に用いられており、カーダールの勝利は、1963年の革命家たちに対する大赦によって示されました。これは、思想警察の不在を示すためのものでした。

方策と手段

ÁVHは、政府の基準に縛られず、共産党を直接的に支援していました。その活動は秘密裏に行われ、情報を隠蔽することで神秘性を増していました。秘密逮捕、長期拘束、拷問などを用いて、自白を強要し、それに基づいて政府機関が法的文書を作成するという手法が常態化していました。例えば、イギリス共産党に参加していたエディス・ボーンの不法逮捕と拘留などがその例です。

ÁVHの活動は憲法の規制の対象外であり、1953年には、ラウル・ワレンバーグがソ連に連行されたのではなく、シオニストの犠牲になったことを証明するための見せしめ裁判を準備しました。この裁判のために、ユダヤ人指導者や関係者が逮捕され、拷問を受けました。しかし、スターリンの死後、裁判の準備は中止され、逮捕された人々は釈放されました。

強制収容所

ÁVHは、判決に基づいて政治犯を強制収容所に収容しました。初期の収容所は粗雑で残酷であり、元共産党員は他の囚人よりも厳しく扱われました。1953年以降は、収容所の状態は改善され、元共産党員は優遇されるようになりました。1953年以前は、強制収容所は囚人の死を目標としていましたが、1953年から1955年の第一次ナジ・イムレ政権下では、収容所の状態が大きく改善されました。

国際活動

ÁVHは、見せしめ裁判を開催することで、ソ連圏の保安装置を支援しました。1948年には、ローマ・カトリック教会のミンゼンティ・ヨージェフ枢機卿が裁判にかけられ、収監されました。1949年には、民族主義者・チトー主義者の廉で、共産党幹部であり、ÁVHを組織した人物でもあるライク・ラースロー外務大臣が見せしめ裁判にかけられ、処刑されました。

1956年ハンガリー動乱におけるÁVH

ハンガリー動乱の期間中、参加者はÁVHの構成員や密告者を殺害しました。共和国広場の労働党本部にいたÁVH職員は私刑に処されました。ドゥダーシュ・ヨージェフの民兵はÁVH職員を虐殺し、この事件は西側、東側両方の記者によって記録されました。学生評議会と労働者評議会は自警団を編成し、ÁVH職員を逮捕拘留して、将来の裁判に備えました。ソ連が政府を支援するためにハンガリーに侵攻すると、ÁVHは革命勢力に報復し、ナジ・イムレの政府関係者や多くの学生や労働者を逮捕しました。

恐怖の館

アンドラーシ通り60号にある建物は、かつて矢十字党の本拠地でしたが、その後、ÁVHの司令部となりました。現在は、政治組織の犠牲者を記念する博物館「恐怖の館」として公開されています。

関連人物

* ペーテル・ガーボル：1948年〜1953年の間、長官を務めました。

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