ハンザ・ブランデンブルク W.29

W.29について

W.29は、ドイツ帝国のハンザ・ブランデンブルク（Hansa und Brandenburgische Flugzeug-Werke）が開発した単発の低翼単葉複座水上戦闘偵察機です。この機体は、特に第一次世界大戦中における海上航空戦の重要な一翼を担い、後に日本海軍にも採用されました。

開発の背景

1918年の初頭に、エース・パイロットのフリードリッヒ・クリスチャンセン中尉が、ハンザ・ブランデンブルクの成功作W.12の性能向上を求めたことが、W.29の開発の契機となりました。開発は非常に迅速で、同年4月には既に部隊への引渡しが始まりました。この機体の設計には、飲食店のメニューの裏に中尉が記したスケッチが利用されたと言われています。

設計の特徴

W.29は、水上機としては珍しい単葉構造を持ち、流線型の機体が特徴的です。その構造により、波による干渉を避けるために、胴体後部は上に反り上がる形をしています。尾翼は水平尾翼と垂直尾翼を持ち、他の同社製機体と同様に、独特の楔型後部胴体が安定性を稼いでいます。抵抗が少なく俊敏な動きが可能な一方で、水上での安定性には課題があり、特に追い風時に前方に転覆する癖がありました。

運用実績

この機体は、ドイツ海軍に配備され、特に第一次世界大戦終盤の北海沿岸で英空軍との制空権争奪戦において重要な役割を果たしました。また、アウストロ・ダイムラー製のエンジンに換装された機体や、デンマークでのライセンス生産も行われるなど、多様な運用がなされました。

日本への導入

戦後の1922年、大日本帝国はドイツからの戦利品として多くの航空機を取得しました。その中で、W.29は横須賀海軍工廠に送られ、詳細な調査が行われました。調査結果から、日本での使用に問題がないとされ、早急に水上偵察機としての生産が決まりました。エンジンはベンツ製から三菱製のイスパノ・スイザに変更され、愛知航空機と中島飛行機にて生産が開始されました。1925年には制式採用され、約300機が生産されました。

日本海軍はこの機体を用い、北海での戦闘において最優秀の水上機を備えたことになります。いくつかのW.29は民間に払い下げられ、1938年頃まで使用されました。

性能諸元

• - 全長: 9.29 m
• - 全幅: 13.57 m
• - 全高: 3.38 m
• - 翼面積: 31.3 m²
• - 空虚重量: 1,000 kg
• - 自重: 1,470 kg
• - 全備重量: 2,100 kg
• - 翼面荷重: 67.1 kg/m²
• - 発動機: ベンツ Bz III 液冷直列6気筒エンジン ×1
• - 出力: 150馬力
• - 最高速度: 168 km/h
• - 飛行継続時間: 4時間
• - 実用飛行上限高度: 4,500 m
• - 乗員: 2名
• - 武装: lMG 08/15 シュパンダウ 7.92 mm機銃 ×1または×2（前方固定）及びlMG14パラベラム7.92 mm機銃 ×1（後方旋回）

ハンザ・ブランデンブルク W.29は、戦闘機としての役割を果たしつつ、その歴史的な意義からも忘れられない存在となっています。

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