ハント級駆逐艦

ハント級駆逐艦

ハント級駆逐艦は、第二次世界大戦中にイギリス海軍が運用した護衛駆逐艦の艦級です。戦時における大量建造を想定し、低コストかつ小型に設計されました。当初は魚雷装備を持たず、対空・対潜戦に重点を置いていましたが、その後の改良で対水上火力も強化されました。計画段階では高速護衛艦と呼ばれていましたが、キツネ狩りに由来する艦名が与えられたことから、ハント級という艦級名が定着しました。

開発の背景

1930年代後半、イギリス海軍は、艦隊型駆逐艦と護衛駆逐艦の両方を必要としていました。当時の駆逐艦は大型化・高コスト化が進んでおり、旧式駆逐艦の代替が追いつかない状況でした。そこで、バックハウス大将は、戦時急造に適した小型駆逐艦の建造を提唱し、グドール造艦局長に試案作成を指示しました。

当初の設計案では、25ノット艦案と30ノット艦案が検討されましたが、最終的には30ノット案を基に、4インチ連装両用砲3基を搭載する設計に決定しました。しかし、グドール造艦局長の指示により、全長や建造費が再検討され、兵装や航続距離も調整されました。その結果、航続距離は必要最低限にまで削減されましたが、ソナーや爆雷の装備、弾薬量の増加、乗員スペースの確保などが盛り込まれました。

設計と問題点

水槽実験の結果、船体抵抗が大きいことが判明しましたが、プロペラ形状の調整で性能を発揮できることが確認されました。しかし、1番艦「アサーストン」の公試で、致命的な復原性不足が明らかになりました。これは設計ミスによるもので、建造途中の重量増によるものではありませんでした。そのため、「アサーストン」では2番砲を廃止し、バラストを搭載するなどの改修が行われました。

その後の改良型として、II型では船体幅を広げ、復原性を保ちながら45口径10.2cm連装砲3基を搭載できるようにしました。III型もこれを修正した設計を採用しました。また、当初はフィンスタビライザーが搭載されていましたが、実運用での成績が芳しくなかったため、後期建造艦では撤去され、燃料タンクに転用されました。

各型の特徴

ハント級には、以下の4つのサブクラスが存在します。

I型: 原型の設計に基づいて建造されたグループです。復原性不足の問題を抱えていましたが、改修によって改善されました。砲熕兵器は連装砲が2基に削減されています。
II型: スワン・ハンター社によって改良された設計を採用したグループです。船体幅を広げることで復原性を改善し、連装砲3基の搭載を可能にしました。
III型: 戦訓を踏まえて要求事項が改訂されたグループです。対艦兵器として魚雷発射管を搭載した代わりに、連装砲は2基に削減されました。
IV型: ソーニクロフト社独自の設計を採用したグループです。艦内容積確保と凌波性向上のため、長船首楼型とされました。

装備

ハント級の主砲は、45口径10.2cm砲（QF 4インチ砲Mk.XVI）で、I型では連装砲2基、II型では3基、III型では2基搭載されました。射撃指揮装置は簡素化され、対空用の射撃盤と、スループ向けの対水上用射撃盤が搭載されました。

対空兵器としては、39口径40mm4連装機銃（QF 2ポンド・ポンポン砲）が搭載され、後に70口径20mm単装機銃や、39口径または56口径40mm単装機銃が追加されました。レーダーや短波方向探知機も搭載されましたが、艦隊駆逐艦と比べて余裕がなく、全てのセンサーを搭載することはできませんでした。

運用と影響

ハント級は、第二次世界大戦中に主に船団護衛任務で活躍しました。その低コストかつ大量建造可能な設計は、戦時中のイギリス海軍にとって重要な戦力となりました。また、その設計思想は、アメリカ海軍のエヴァーツ級護衛駆逐艦にも影響を与えています。

まとめ

ハント級駆逐艦は、戦時急造を前提とした低コストの小型駆逐艦でありながら、その後の駆逐艦設計に大きな影響を与えた艦級です。設計の変遷を経て、4つのサブクラスが存在し、それぞれに特徴があります。対空・対潜戦に特化した設計でしたが、その後の改良で対水上火力も強化され、第二次世界大戦中のイギリス海軍を支える重要な役割を果たしました。

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