対艦兵器

対艦兵器とは、水上艦艇を攻撃するために開発された兵器の総称です。その種類は多岐にわたり、発射プラットフォームによって大きく以下の3つに分類されます。

空対艦兵器: 航空機から発射される対艦兵器
艦対艦兵器: 艦船から発射される対艦兵器
* 地対艦兵器: 地上から発射される対艦兵器

空中発射型対艦兵器の発展

第二次世界大戦中、航空機は主に砲熕兵器、ロケット弾、魚雷、無[[誘導爆弾]]などを対艦攻撃に用いていました。その後、精密誘導兵器（PGM）の開発が進むにつれて、誘導爆弾が導入されるようになります。1943年にはドイツ空軍がフリッツXを、1945年にはアメリカ海軍がバットを実戦投入し、フリッツXはイタリア海軍の戦艦「ローマ」を撃沈する戦果を挙げました。また、同時期には推進装置を備えた空対艦ミサイルの開発も進められ、ドイツ空軍は1943年からHs.293を実戦投入しています。

戦後、ソ連はナチス・ドイツから得たミサイル技術を基に巡航ミサイルの開発を進め、1953年にはMiG-15戦闘機を無人化したような設計のKS-1（AS-1）を就役させました。これはソ連初の空対艦ミサイルとなりました。その後も開発は進み、1966年には射程650kmのKSR-5（AS-6）が配備されています。しかし、ソ連では戦略爆撃機搭載用の大型・長射程ミサイルの開発が優先されたため、戦術的なミサイルの開発は1960年代後半にずれ込みました。

一方、西側諸国では小型・短射程ミサイルの開発が先行しました。1959年には、アメリカ海軍の対潜哨戒機が潜水艦攻撃用の指令誘導式ブルパップ（射程19km）を配備。1970年代には、NATO諸国で電波・光波ホーミング誘導式の空対艦ミサイルが実用化されました。エグゾセは、1982年のフォークランド紛争で駆逐艦「シェフィールド」を撃沈し、その名を知らしめました。

艦上発射型対艦兵器の歴史

14世紀に艦砲が登場しましたが、当初は人間殺傷を目的としたものでした。イングランド国王ヘンリー8世は、攻城砲を艦載化することで船体を破壊できると考え、1545年8月15日に実戦投入され戦果を挙げました。これが対艦兵器としての艦砲の始まりとされています。

19世紀には、炸裂弾の導入と砲弾の大型化により破壊力は向上しましたが、発射間隔の長期化や照準方法の遅れ、装甲技術の発達などにより、艦砲の効果は一時的に低下しました。

同時期に水雷兵器が発達し、小型ボートによる外装水雷や、自走式の魚雷が登場。水雷艇などの対艦兵器として広く用いられました。その後、速射砲の登場や砲術の発達により、大口径砲を搭載した大型艦を建造する大艦巨砲主義の時代が到来します。

航空機の発達により、第二次世界大戦では航空機の優位が確立。軍艦の装備は対潜・対空兵器が重視されるようになりました。しかし、ソ連は艦対艦ミサイルの有用性に着目し、短射程のP-15（SS-N-2）を開発、1959年にミサイル艇に搭載して配備を開始しました。翌1960年には、射程460kmのP-6（SS-N-3）が登場し、アメリカ海軍の空母任務部隊への対抗策として潜水艦やミサイル[[巡洋艦]]に搭載されました。

アメリカ海軍は当初、艦対空ミサイル（SAM）で対艦兵器を兼用する方針でしたが、西側諸国では、海上兵力で劣勢な北欧諸国やイスラエルが早期に艦対艦ミサイルに着目。1966年にはスウェーデンがRB 08を、1972年にはイスラエルがガブリエル、ノルウェーがペンギンを配備しました。

1967年には、ソ連製P-15ミサイルを搭載したエジプト海軍のミサイル艇がイスラエル海軍の駆逐艦「エイラート」を撃沈する事件が発生し、西側諸国にSSMの脅威を強く印象付けました。1973年の第四次中東戦争では、イスラエルとシリアのミサイル艇同士が交戦し、海戦のミサイル化を象徴する戦いとなりました。

地上発射型対艦兵器の展開

巡航ミサイルの艦船搭載と並行して、地上から運用する地対艦ミサイルが登場しました。ソ連は弾道ミサイルを対艦兵器として使用することも検討し、SLBMのR-27をベースとした対艦弾道ミサイルR-27Kを開発しましたが、SALT IやINF条約の影響で配備には至りませんでした。

1990年代以降、中国がA2/AD能力の強化を進める中で、対艦弾道ミサイル（ASBM）の開発・配備を推進。2010年にはDF-21D、2018年にはDF-26Bが配備を開始しています。

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