ハンバー・スーパー・スナイプ

ハンバー・スーパー・スナイプ：イギリスが誇る高級車の歴史

ハンバー・スーパー・スナイプは、イギリスの自動車メーカー、ルーツ・グループのハンバーブランドによって1938年から1967年まで製造された、風格漂う大型高級乗用車です。戦前、戦後を通じて改良が重ねられ、イギリスの自動車史に重要な足跡を残しました。その魅力と歴史を紐解いていきましょう。

戦前型スーパー・スナイプ (1938年-1940年)

1938年10月、スーパー・スナイプはデビューしました。ベースとなったのは、同社の高級車プルマンに搭載されていた4,086ccの直列6気筒サイドバルブエンジン。これを、より小型で軽量な「スナイプ」のシャーシに搭載することで、優れた動力性能と比較的低価格を実現しました。最高速度は127km/hに達し、当時としては群を抜く高速車として注目されました。ボディスタイルは4ドアセダン、4ドアスポーツセダン、2ドアのドロップヘッドクーペの3種類が用意され、企業幹部や専門職といったアッパーミドル層を中心に人気を博し、第二次世界大戦が始まるまでに約1,500台が販売されました。戦時中は軍用車としても活躍し、特にイギリス軍のバーナード・モントゴメリー元帥の専用車として使用されたことが有名です。

マークI～III (1945年-1951年)

第二次世界大戦終結後、1946年にスーパー・スナイプの生産が再開されました。戦後イギリスは深刻な外貨不足に悩まされており、スーパー・スナイプは輸出促進の重要な役割を担いました。

1946年発売のマークIは、戦前型をベースにしながらも、改良が加えられていました。生産台数は3,909台。一方、2,731ccエンジンを搭載した「スナイプ」もラインナップされていました。1948年に登場したマークIIでは、ヘッドランプがフロントフェンダーに埋め込まれ、前輪独立懸架が採用され、走行性能が向上しました。ボディスタイルも4ドアセダン以外にも、工場製のステーションワゴンや、ティックフォード社製の2ドア ドロップヘッドクーペが選べるようになりました。マークIIは8,361台を生産。続く1950年のマークIIIでは、後輪サスペンションにパナールロッドを追加することで、走行安定性が大幅に向上しました。雑誌『ザ・モーター』誌のロードテストでは、最高速度131.3km/h、0-60mph加速19.1秒という当時としては優秀な成績を記録しました。生産台数は8,703台でした。

マークIV (1952年-1957年)

1952年に登場したマークIVは、デザイナー、レイモンド・ローウィによるスタイリッシュなデザインが大きな特徴です。ホーク・マークIVのボディをベースにホイールベースを延長し、エンジンはルーツグループのコマー・トラック用をベースとした4,138ccのOHV直列6気筒エンジンを搭載。1955年からはマニュアルトランスミッションにオーバードライブが追加され、1956年にはオートマチックトランスミッションも選択可能となりました。最高速度146km/h、0-60mph加速14.7秒という優れた性能を達成しました。オーストラリアでもノックダウン生産され、成功を収めました。生産台数は17,993台に及びました。

ニュー・スーパー・スナイプ (1958年-1967年)

1958年、スーパー・スナイプはモデルチェンジを行い、「マーク」から「シリーズ」というネーミングに変更されました。車体は4気筒エンジンのホークと共通化され、6気筒エンジン版として登場。小型化されたものの、居住空間は広くなりました。当初は2,655ccの直列6気筒OHVエンジンを搭載していましたが、シリーズII以降は2,965ccに排気量アップされました。ルーツ・グループにおけるフラグシップモデルとして、その地位を確立しました。シリーズIからVまで、合計2万3,000台以上が生産されました。ボディスタイルは4ドアセダンと5ドアエステートワゴンがありました。シリーズIIでは2,965ccエンジンと前輪ディスクブレーキが採用され、シリーズIIIでは4灯式ヘッドライトが採用。シリーズIVではエンジン出力が向上。最終モデルのシリーズVでは、ルーフラインがフラットになり、サイドウィンドウが6ライト式となるなど、内外装に多くの改良が加えられ、フルシンクロトランスミッションやオートマチックトランスミッション、パワーステアリングもオプションで選択可能になりました。最高級モデルとして「ハンバー・インペリアル」もラインナップされました。

日本への輸入

1950年代前半から1960年代半ばにかけて、伊藤忠オートによって日本にも輸入されました。しかし、当時日本市場ではアメリカ車の人気が高く、スーパー・スナイプの販売台数は多くありませんでした。

スーパー・スナイプが登場する作品

アニメ映画『ルパン三世 カリオストロの城|ルパン三世_カリオストロの城』で、敵役がスーパー・スナイプに乗車しており、カーチェイスシーンでその存在感を示しました。ミニカーも発売されています。

まとめ

ハンバー・スーパー・スナイプは、戦前、戦後を通じてイギリスの自動車産業を支えた高級車です。その歴史と技術革新は、今日の自動車産業にも大きな影響を与えています。また、様々なメディアにも登場しており、その存在感は今もなお人々の記憶に残っています。

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