ハンムラビ法典

ハンムラビ法典：古代バビロニアの法と社会

ハンムラビ法典は、紀元前18世紀にバビロニアを統治したハンムラビ王によって制定された古代メソポタミアの法典です。玄武岩に楔形文字で記されたこの法典は、当時の社会構造や倫理観を現代に伝える貴重な資料となっています。

法典の概要

ハンムラビ法典は、ウル・ナンム法典、リピト・イシュタル法典、エシュヌンナ法典に次いで、世界で4番目に古い法典として知られています。高さ2.25mの石柱に刻まれ、「前書き・本文・後書き」の3部構成で、全282条からなります。

石柱の発見と所蔵

1901年にフランス人考古学者によってイランのスサで発見されました。元々はバビロンのマルドゥク神殿に置かれていたものが、紀元前12世紀にエラム王によって奪われたと考えられています。現在はパリのルーヴル美術館に所蔵されており、レプリカが世界各地の博物館で見ることができます。

法典の構成と内容

前書き: ハンムラビ王の業績と、法典制定の目的が述べられています。
本文: 282条からなる条文は、当時の社会における様々な問題に対する規定を網羅しています。刑法、民法、商法など、多岐にわたる分野の法律が含まれています。
* 後書き: 法典の正当性を主張し、後世の王への訓戒が記されています。

「目には目を、歯には歯を」

ハンムラビ法典を代表する言葉として知られる「目には目を、歯には歯を」は、同害報復の原則を示しています。しかし、これは単なる復讐の許可ではなく、刑罰の均衡を保ち、過剰な報復を防ぐためのものでした。身分制度によって刑罰が異なる点も特徴で、自由民同士、奴隷同士など、身分が同じ者同士にのみ適用されました。

法典の目的と現代的解釈

ハンムラビ法典は、単に厳罰を科すだけでなく、財産の保障、弱者救済、女性の権利保護なども目的としていました。奴隷であっても一定の権利が認められ、条件によっては解放される条文も存在します。現代の視点から見ると不平等な点もありますが、当時の社会においては画期的な内容を含んでいました。

ハンムラビ法典の評価と影響

罪刑法定主義の起源

同害報復の原則は、罪刑法定主義の起源とされています。犯罪に対する刑罰を予め定めることで、恣意的な刑罰を防ぎ、法の支配を確立しようとしたのです。

公平性と弱者救済

ハンムラビ法典には、現代的な倫理観に通じる条文も存在します。例えば、犯罪被害者への賠償や、加害者が不明な場合の公金による補償などが定められています。また、「強者が弱者を虐げないように」という文言は、弱者救済の理念を示しています。

ハンムラビ法典と聖書

ハンムラビ法典と旧約聖書には、「目には目を」という同様の記述が見られますが、その解釈や適用には違いがあります。ハンムラビ法典が身分によって刑罰を異にするのに対し、聖書の律法では身分による差はありません。

まとめ

ハンムラビ法典は、古代バビロニアの社会、文化、法制度を理解するための重要な手がかりとなります。同害報復の原則や身分制度など、現代の価値観とは異なる点も多くありますが、法の支配、公平性、弱者救済といった普遍的な理念も含まれています。ハンムラビ法典の研究は、法学、歴史学、文化人類学など、様々な分野に貢献しています。

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