ハートレー事件

ハートレー事件の概要

ハートレー事件は1877年12月に発覚した、イギリス人商人ジョン・ハートレーによる日本でのアヘン密輸に関する歴史的な事件です。この事件は、日本とイギリスの条約関係、そして当時の日本における治外法権の問題に対する国民の意識に大きな影響を与えました。

事件の経緯

事件が始まったのは、ハートレーが横浜の外国人居留地に住んでいた頃。彼は生アヘン20ポンド（約9.072キログラム）を「染物」と称して密輸しようとしました。しかし、税関によってこの試みは発覚し、税関長はハートレーを日英修好通商条約に基づく貿易章程違反として神奈川のイギリス領事館に訴えを起こしました。

その後、1878年2月20日に行われた領事裁判法廷において、ハートレーは生アヘンを薬用として使用するためだと主張しました。この主張に対し、裁判所は無罪を言い渡し、関連法令には違反していないとの判断を示しました。具体的には、アヘンが日英条約附属の貿易章程において輸入禁制品とされていたにも関わらず、領事裁判法廷はイギリスの国内法との整合性を重視したのです。

日本社会への影響

この事件は、当時の日本国民に大きな関心を引き起こしました。特に、同時期に流行していたコレラに比べ、アヘン事件の深刻さを訴える意見があったほどです。外務卿の寺島宗則は、この判決を条約の偏頗な解釈に基づくものだとして強く抗議しました。

日本政府はその後、イギリスの裁判所に上訴する方針を検討しましたが、最終的には外交交渉による解決を試みることに切り替えました。イギリス政府は、1879年に日本に「薬用アヘン移入規則」を制定すべきであると求め、事件は何も解決を見ないまま迷宮入りしました。

国家の威信と国民の安全

ハートレー事件は、翌年発生するヘスペリア号事件とも関連し、国民に法権の回復が国家の威信を保つために不可欠であることを認識させる契機となりました。国民の安全と命を守るためには、列強による治外法権に対する条約改正が求められることが広まるようになり、これが後の鹿鳴館外交や欧化政策につながるのです。

まとめ

ハートレー事件は、日本の歴史における重要な出来事であり、国際関係や当時の国内の治安、国民意識に多大な影響を与えました。この事件は日本が国家主権を取り戻し、国際法の下で対等な立場を確立する必要性を明らかにするものとなりました。

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