ハーネルMP28短機関銃

MP28短機関銃：ヴァイマル共和政時代の傑作

MP28短機関銃は、第一次世界大戦後のドイツ、ヴァイマル共和政時代に開発された短機関銃です。その起源は、第一次世界大戦末期に開発されたMP18に遡ります。MP18は、塹壕戦での接近戦闘を想定し、軽量で取り回しの良い武器として設計されました。

開発の経緯

第一次世界大戦中、膠着状態にあった西部戦線において、ドイツ軍は新たな戦術として浸透戦術に着目しました。この戦術を実行するための精鋭部隊として編成されたのが突撃大隊です。この部隊の装備として、迅速かつ効果的な戦闘遂行を可能にする新たな火器が求められていました。こうした背景から、ベルクマン社の技術者、ヒューゴ・シュマイザー氏らによってMP18が開発されたのです。

しかし、敗戦後のドイツはヴェルサイユ条約によって厳格な軍備制限を課せられました。短機関銃は条約で直接言及されていませんでしたが、軽機関銃や自動小銃とみなされる可能性があり、その製造と軍への配備は困難を極めました。

ベルクマン社はスイスのスイス工業社（SIG）とライセンス契約を結び、SIG M1920としてMP18の改良型を製造しました。シュマイザー氏はその後、ベルクマン社を退職し、ハーネル社に移籍。MP18用の改良型箱型弾倉を開発しました。これは既存のMP18に取り付けるためのもので、銃本体の新規製造は行いませんでした。この弾倉は様々な口径の弾薬に対応できる設計が特徴でした。

MP28,IIは、このシュマイザー設計の改良型弾倉を用いたMP18の更なる発展型です。外見はMP18とよく似ていますが、20/32連発の箱型複列弾倉を使用し、給弾口は機関部と直交する構造に変更。また、セミ/フルオート射撃を切り替えられるセレクターが追加され、照準距離は1000mまで調整可能になりました。シングルフィード式の弾倉を採用したのは、多重給弾による動作不良を防ぐため、そしてモーゼル社の特許を避けるためでした。

運用と普及

MP28の製造はハーネル社が行いました。1920年から1928年にかけて、シュマイザー氏はMP28に関する複数の特許を取得し、1925年にはヴァイマル共和国軍による非公式な試験も行われています。

ドイツ軍による制式採用はありませんでしたが、警察や親衛隊などが独自に調達しました。チャコ戦争やスペイン内戦では、ボリビア軍、パラグアイ軍など複数の国軍で広く使用されました。

MP28の販売は主に輸出によって支えられました。そのため、9mmパラベラム弾以外にも、7.63x25mm弾、7.65x21mm弾など様々な口径のモデルが生産されました。ベルギーのピーパー社はライセンス生産を行い、南アフリカ、南アメリカ、中国、日本、スペインなどにも輸出されました。

ベルギーではM1934短機関銃として、イギリスではランチェスター短機関銃として、スペインではM1929短機関銃（ナランヘロ）として、MP28を基にしたコピー銃が採用されました。これらのコピー銃では、製造の容易さや材料の入手性などを考慮し、設計の一部が変更されているケースもありました。

MP28の技術的特徴と影響

MP28は、MP18をベースにしながらも、信頼性と操作性の向上、射程の拡大、多様な弾薬対応など、多くの改良が施された短機関銃でした。その設計思想や機構は、後続のドイツ製短機関銃や、世界各国で開発された短機関銃にも大きな影響を与えました。特に、MP28の箱型弾倉の設計は、MP38/40やステンガンなど、多くの短機関銃に採用されました。

まとめ

MP28は、軍備制限下のヴァイマル共和政下において、輸出を主軸とした生産体制を確立し、世界各国に広まった短機関銃です。その技術的な進歩は、後の短機関銃開発に大きな影響を与え、20世紀の火器史において重要な位置を占めるモデルと言えるでしょう。

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