ハーバート・ハウエルズ

ハーバート・ノーマン・ハウエルズ（1892年10月17日 - 1983年2月23日）は、20世紀イギリスの音楽界において重要な位置を占める作曲家、オルガニスト、そして音楽教育家でした。彼の音楽は、特に英国国教会のために作曲された典礼音楽や合唱作品において、今日でも高く評価され、広く演奏されています。

イングランド南西部のグロスターシャー州リドニーに生まれたハウエルズは、アマチュアながらオルガニストであった父親から早期に音楽の手ほどきを受け、幼い頃からその才能の片鱗を見せていました。グロスター大聖堂のオルガン奏者であったハーバート・ブルワーに師事した後、音楽の専門教育を受けるため、ロンドンの名門、王立音楽大学に入学します。ここでは、チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードやチャールズ・ウッドといった、当時のイギリス音楽界を牽引する作曲家兼教育者たちから指導を受け、作曲技法や対位法などを深く学びました。卒業後、1917年には短期間ながらソールズベリー大聖堂でオルガニスト助手を務め、実践的な経験も積んでいます。

彼の初期のキャリア、おおよそ20代から30代にかけては、主にオーケストラのための楽曲や室内楽作品の創作に重点が置かれていました。この時期の作品には、後の彼のスタイルを予感させるような、美しい旋律と洗練されたハーモニーが見られます。

しかし、ハウエルズの人生と芸術に大きな転機が訪れたのは、1935年のことでした。9歳だった愛息マイケルを脊髄炎で亡くすという、耐えがたい悲劇に直面したのです。この深い悲しみは、彼のその後の創作活動に計り知れない影響を与えました。息子への追悼の念が、彼の音楽に以前にも増して精神的な深みと内省的な性格をもたらし、特に宗教音楽の分野へと彼を深く導いていきました。この時期以降、ハウエルズは次第に宗教音楽の作曲家として広く知られるようになります。

息子の死後、その追悼のために作曲された合唱と管弦楽のための大作『楽園の賛歌（Hymnus Paradisi）』は、彼の代表作として最もよく知られています。この作品は完成後しばらくの間、個人的な悲しみの表現として発表されませんでしたが、1950年に初演されるやいなや、その圧倒的な美しさと深い精神性で聴衆に衝撃を与えました。また、ハウエルズは英国国教会の礼拝のために数多くの合唱曲を作曲しており、これは彼の重要な業績の一つです。特に、ケンブリッジ大学キングズ・カレッジ聖歌隊、セント・ポール大聖堂聖歌隊、そして彼の故郷に近いグロスター大聖堂聖歌隊のために書かれた作品群は有名で、マニフィカトやヌンク・ディミッティスなどの典礼音楽は、現在でも世界中の教会やコンサートで頻繁に演奏されています。

ハウエルズの作品リストは非常に多岐にわたります。大規模なオーケストラ作品、ピアノやヴァイオリン、チェロといった独奏楽器とオーケストラのための協奏作品、弦楽合奏のための楽曲があります。室内楽の分野では、ピアノ四重奏曲、ヴァイオリン・ソナタ、弦楽四重奏曲『グロスターシャーにて』、管楽器のためのソナタなど、多様な編成の作品を残しています。オルガン作品も彼の重要なレパートリーであり、詩篇前奏曲や狂詩曲、ソナタなどが演奏されます。ピアノのための小品や組曲、そして合唱と管弦楽のための『ミサ・サブリネンシス』や『スターバト・マーテル』、無伴奏の宗教合唱曲『レクイエム』、様々な独唱曲集など、声楽作品も膨大です。

彼の音楽は、イギリスの伝統音楽やグレゴリオ聖歌の影響を受けつつも、印象派や20世紀初頭の語法も取り入れた独特のスタイルを持っています。レイフ・ヴォーン・ウィリアムズやアーサー・ブリスといった同時代の作曲家たちとも交流がありました。

ハーバート・ノーマン・ハウエルズは、特にその合唱音楽と宗教音楽を通じて、20世紀のイギリス音楽に不朽の足跡を残しました。彼の作品は、個人的な経験、信仰、そしてイギリスの精神が深く結びついた、真に感動的な響きを持っています。

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