ハーミーズ (空母・2代)

イギリス海軍航空母艦ハーミーズ(HMS Hermes, R12)：激動の艦歴と変遷

ハーミーズ(R12)は、イギリス海軍が運用したセントー級航空母艦の4番艦であり、同海軍最後の従来型航空母艦として知られています。その艦歴は、設計から退役、そしてインド海軍での再就役まで、実に波乱に満ちたものでした。日本においては「ハーミス」または「ハーミズ」とも呼ばれています。

設計と就役

第二次世界大戦中の1944年、ヴィッカース・アームストロング社バロー・イン・ファーネス造船所で「エレファント」として建造が開始されました。しかし、戦況の変化により1945年には建造が一時中断。その後、1952年に工事が再開され、1953年に進水、1959年にようやく就役しました。就役時には、蒸気カタパルトとアングルド・デッキを備え、ジェット機の運用能力を有していました。

改装とフォークランド紛争

しかし、ジェット機のサイズが大型化していくにつれて、ハーミーズは時代遅れになっていきます。シービクセンの後継機であるファントムの運用が困難になったことから、1971年にはカタパルトとアレスティング・ワイヤが撤去され、コマンド母艦へと改装されました。その後、1976年には対潜空母として再改装。さらに1980年から1981年には、12度のスキージャンプ勾配が設置され、BAe シーハリアーなどのV/STOL機運用能力を持つ空母へと生まれ変わりました。

1982年のフォークランド紛争では、当初は退役予定だったにもかかわらず、急遽整備され、イギリス艦隊の旗艦として活躍しました。新型のインヴィンシブル級軽空母「インヴィンシブル」と共に、シーハリアー搭載機による作戦行動を行い、SASや海兵隊の輸送にも貢献しました。ちなみに、オーストラリア海軍は、当初インヴィンシブル級を購入予定でしたが、紛争の影響でハーミーズの購入を提案したという逸話も残されています。

退役とインド海軍での再就役

フォークランド紛争後の1984年4月に退役し、1985年に除籍。1986年にはインドに売却され、1987年5月にインド海軍の「ヴィラート」として再就役しました。ヴィラートは、インド海軍において長年にわたって活躍しましたが、2017年3月6日についに退役しました。

搭載機

ハーミーズの搭載機は、その改装の歴史と軌を一にしています。初期のCATOBAR運用時代には、シミター、シービクセンなどの艦上戦闘機やガネットなどの対潜哨戒機、ウェセックスなどのヘリコプターが搭載されていました。搭載機は幾度かの更新を経ていますが、機種は時代とともに変化していきました。

V/STOL改装後は、シーハリアーとシーキングヘリコプターが中心となり、フォークランド紛争時には、ハリアー攻撃機も一時的に搭載されました。

まとめ

ハーミーズは、イギリス海軍における航空母艦の技術革新と、冷戦時代の激動を象徴する艦艇でした。その艦歴は、単なる軍事史の1ページではなく、時代と技術の変化の中でいかに艦艇がその役割を変えていくのかを示す、貴重な事例と言えるでしょう。インド海軍での活躍も含め、その生涯は長く、そして非常にドラマティックなものでした。様々な改装を繰り返した歴史や、フォークランド紛争への参加、そしてインド海軍での長年の運用など、ハーミーズは多くの物語を秘めた、記憶に残る艦艇と言えるでしょう。

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