ハーリド・ビン・アブドゥッラー

ハーリド・ビン・アブドゥッラー・アール＝サウード（？-2021年1月12日）は、サウジアラビア王族の一員であり、その名を世界中に知らしめたのは、競馬界における卓越した功績です。彼はサウジアラビア初代国王アブドゥルアズィーズ・イブン・サウードの弟の息子という血筋を引いており、王族の傍系にあたります。

王族という立場に甘んじることなく、サウジアラビア国外、主にイギリスを拠点に実業界へと進出しました。そして、マワーリド・グループという企業を設立し、成功を収めました。しかしながら、彼の名声を不動のものにしたのは、何と言っても競馬における活躍です。

1970年代後半から、オーナーブリーダーとして世界的な活躍を始めます。イギリス、アイルランド、アメリカに広大な牧場ジュドモントファームを所有し、イギリスにはバンステッドマナースタッドという種牡馬場も所有していました。これは、彼が単なる馬主ではなく、競馬産業そのものへの深い関与を示しています。

彼が所有した競走馬は数々のG1競走を制覇しました。その中には、競馬史に名を刻む名馬も多く含まれています。例えば、2000ギニー、エクリプスステークス、キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス、そして凱旋門賞を制したダンシングブレーヴ、同じく凱旋門賞を制したレインボウクエストなどが挙げられます。

他にも、デインヒル、クエストフォーフェイム、コマンダーインチーフ、ウォーニング、レイルリンク、ワークフォースなど、数々の名馬が彼の所有馬として活躍しました。そして、近年ではフランケルやエネイブルといった、現代競馬を代表するスターホースが彼の所有下で数々の偉業を達成しました。フランケルは2000ギニー、セントジェームスパレスステークス、サセックスステークス（2回）、クイーンエリザベス2世ステークス、ロッキンジステークス、クイーンアンステークスなど、主要G1競走を多数制覇しました。エネイブルはオークス、アイリッシュオークス、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス（3回）、ヨークシャーオークス（2回）、凱旋門賞（2回）、ブリーダーズカップ・ターフ、エクリプスステークスと、まさに伝説的な競走成績を残しました。さらに、ディスタントヴューもサセックスステークスを制しています。

これらの馬たちの活躍は、ハーリド・ビン・アブドゥッラー・アール＝サウードの優れた馬選びの眼力と、彼自身の競馬への深い情熱、そしてジュドモントファームを始めとする、世界最高水準の育成・管理体制があってこそ成し遂げられたものと言えます。彼は、単なるオーナーブリーダーの枠を超え、競馬界全体の発展に大きく貢献した人物として歴史に名を残すでしょう。2021年1月12日、85歳でこの世を去りましたが、彼の功績は、人々の記憶の中に、そして競馬史の中に永遠に刻まれることでしょう。

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