バイオメトリック・パスポート

バイオメトリックパスポート（IC旅券）とは

バイオメトリックパスポートは、IC旅券とも呼ばれ、生体認証技術を個人情報記録に利用したパスポートです。電子パスポートやICパスポートなどの名称でも知られています。

導入の背景と概要

2001年のアメリカ同時多発テロ事件を契機に、アメリカ合衆国が主導して世界中に導入が広がりました。現在、アメリカへの入国にはバイオメトリックパスポートが必須であり、ビザ免除プログラム対象国の国民であっても、これがないとビザなしでの入国は認められません。

国際民間航空機関（ICAO）は、IC旅券の仕様を定めており、顔画像の搭載を必須としています。指紋や虹彩画像の搭載は任意とされています。パスポートに貼り付けられる顔写真とICチップに記録された顔画像を照合することで、偽造を検知します。

現状の課題と今後の展望

バイオメトリックパスポートという名称ではありますが、実際にはICチップに記録された顔画像を係官が目視で確認するのみで、厳密な意味での生体認証技術は用いられていません。パスポートの偽造防止には効果を発揮していますが、より高精度な本人確認のために、自動化された機械認証の導入が望まれています。

顔認証は精度に限界があるため、オプションである指紋や虹彩などの他の生体情報の利用が望ましいとされています。しかし、現状ではこれらオプションの利用が進んでいないのが現状です。

指紋情報の取り扱いについて

アメリカのUS-VISITや日本のJ-BISなど、入国時に指紋登録を義務付けている国もあります。また、日本の自動化ゲート利用申請では任意で指紋登録も可能です。しかし、これらの指紋情報はICチップに記録されるのではなく、各国のサーバーで独自に管理されています。

国際的な指紋情報の相互交換は、一部の犯罪捜査を除いて行われていません。したがって、ある国で指紋登録をしていても、他の国では再度登録が必要になるのが現状です。

技術仕様

バイオメトリックパスポートには、32kb以上の容量を持つRFID ICカードが使用されています。このICカードに記録されたデータは、近距離無線通信によって読み取られます。

技術規格としては、RFID規格（ISO/IEC 14443|ISO_IEC 14443）、ICカード規格（ISO/IEC 7816）、IC旅券規格（ICAO Doc 9303）などが適用されています。

世界的な普及

バイオメトリックパスポートは、ヨーロッパ、北米、環太平洋地域など、世界中で導入が進んでいます。

日本のICパスポート

日本では、2006年3月からICパスポートの交付が開始されました。ICチップは、パスポート中央の「DO NOT STAMP THIS PAGE」と書かれたプレートに埋め込まれています。

外務省によると、日本国旅券のICチップには指紋情報は記録されていません。

関連情報

生体認証: 個人を識別するための技術。
顔認識システム: 顔の特徴を認識する技術。
虹彩認識: 虹彩のパターンを認識する技術。
[国際民間航空機関]: 国際的な航空安全基準や規則を定める機関。
ビザ免除プログラム: 特定の国籍の人がビザなしで入国できる制度。
Smartgate: 空港で自動的に出入国審査を行うシステム。
* 事前旅客情報システム: 航空会社が事前に旅客情報を政府機関に提供するシステム。

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