バイスペクトラルインデックス

バイスペクトラルインデックス(BIS)の概要

バイスペクトラルインデックス、通称BISは、脳波の分析を通じて麻酔や鎮静の深さを評価するための指標です。具体的には、患者の前頭部に取り付けた4つの電極から得られる脳波データをもとに、数値として結果を表示します。このBIS値は0から100の範囲であり、数値が高いほど覚醒していることを、逆に低い値はより深い鎮静状態を示します。

BISの歴史的背景

BISは1994年にアスペクトメディカルシステムズ社によって開発され、全身麻酔中の患者の意識レベルを評価する新たな方法として注目を浴びました。1996年にはアメリカ食品医薬品局（FDA）から全身麻酔薬や鎮静薬の効果評価において承認を受け、以来広く利用されるようになりました。

脳波と麻酔の関係

麻酔中の脳波は、頭皮に設置された電極を通じて脳細胞からの電気信号を記録します。脳波は覚醒度に応じて変化し、これを利用して鎮静度を測定することができます。通常、筋弛緩薬が使用されるため、顔面筋からの干渉が少なく、脳波の信号も比較的一貫したものとなります。

電極の配置と脳波の変化

通常、前頭部から得た脳波を使用することが多いです。この場所が選ばれる理由として、麻酔によって脳波の変化がしやすく、また電極の配置が容易であることが挙げられます。麻酔薬の種類によって脳波の波形変化の程度は異なり、揮発性麻酔薬であるセボフルランやイソフルラン、静脈麻酔薬のプロポフォールによる変化は類似しています。

これらの麻酔薬は、濃度が上昇するにつれて脳波の振幅を増大させる一方、周波数は低下する傾向があります。つまり、ゆっくりした波形が優勢になります。濃度がさらに上昇すると、脳波が平坦になり、特異なパターンが見られます。このように麻酔薬の濃度に応じた脳波の変化を確認することにより、適切な麻酔管理が行えるようになります。

脳波モニターの種類

麻酔の深さをモニタリングするために、以下のような装置が使用されます。

• - BISモニター(BIS: bispectral index): BIS値を表示し、0が平坦な脳波、100が完全に覚醒した状態を示します。一般的な指標として、80以上が「覚醒」、60から80が「浅い鎮静」、40から60が「手術に適した麻酔レベル」、40未満が「深麻酔」とされます。
• - aepEXモニター(aep: auditory evoked potential): イヤホンを通じて音を発生させ、頭部に電極を貼付することで麻酔の深さを評価します。完全に平坦な時に0、覚醒時には100に近い数値を示します。

BIS値に影響を与える要因

しかし、BIS値やAEP値は絶対的ではなく、実際の鎮静度と異なる場合もあります。その原因として、以下の点が挙げられます。

• - ノイズの混入: 心拍に由来する電流がBIS計測に影響を及ぼすことがあります。特に新生児や心肥大の患者で顕著です。
• - 年齢: 新生児は覚醒時から徐波が主体となり、小児ではBIS値が実際の鎮静度よりも高く表示されることがあります。
• - paradoxical arousal: 麻酔が不十分な際に痛み刺激が加わると、BIS値が低下することがあります。

• - β activation: 浅い鎮静状態では速い波が増加し、BIS値が高くなる傾向があります。

また、心停止や脳血流の低下にも注意が必要で、これらの要因が影響する場合もあります。

結論

BISは麻酔管理において非常に重要な指標であり、適切な深度を把握することで安全な医療を提供できます。これにより患者の快適さと手術の成功率を高める一助となっています。

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