バストロンボーン

バストロンボーンについて

バストロンボーンは、トロンボーン属の一種で、テナーバストロンボーンとは明確に区別される楽器です。主に低音域を担当し、オーケストラや吹奏楽において重要な役割を担います。コントラバストロンボーンは、バストロンボーン奏者が持ち替えて演奏することがあります。

構造

バストロンボーンの基本構造はテナーバストロンボーンと共通ですが、いくつかの点で異なります。主な違いは以下の通りです。

ボア（管径）: テナーバストロンボーンよりも太い。
ベル: テナーバストロンボーンよりも大きい。
迂回管とバルブ: 1つまたは2つの迂回管とバルブを備える。

標準的なバストロンボーンは、主管の調がB♭で、ボアが14.28mm、ベルが9.5インチです。1つ目の迂回管はF管で、2つ目はG♭管が一般的ですが、G管を持つものもあります。2つの迂回管を併用すると、管長はD管（第2バルブがG管の場合はE♭管）となります。

2つの迂回管を持つ場合、2つ目のバルブの配置にはインラインとオフセットの2種類があります。インラインは2つのバルブがそれぞれ独立して使用できるため、現代では主流となっています。オフセットは、より開放的な吹奏感と音色が得られますが、第1バルブ（F管）使用時以外は第2バルブを使用できないという制約があります。また、バルブを1つしか持たないシングルバルブの楽器もあります。シングルバルブは楽器自体が軽量で、テナーバストロンボーンに近い音色と吹奏感が得られるため、古典派の作品で好んで用いられます。

奏法

基本的な操作は他のトロンボーンと共通していますが、バストロンボーンは良好な音を得るためのアンブシュアや息の使い方がテナーバストロンボーンとは異なります。また、マウスピースもテナーバストロンボーンよりも大きいリムと深いカップのものを使用します。

楽譜

バストロンボーンの楽譜は、低音部記号で書かれるのが一般的です。ただし、英国式ブラスバンドではト音記号で移調して書かれた楽譜が使用されます。オーケストラや吹奏楽では、「バストロンボーン」と指定されたパートのほか、「3番トロンボーン」と指定された曲もバストロンボーンが演奏します。

バストロンボーンは、トロンボーンセクションの一員としてだけでなく、ベースセクションの一員としての役割も期待されます。また、楽曲によっては、単に「トロンボーン」とだけ指定された曲をバストロンボーンで演奏することが慣例となっているものもあります。

種類

バストロンボーンは、B♭管でテナーバストロンボーンよりも大きいベルと太い管を持つ楽器として、ある程度均一化されています。ただし、ドイツ式の楽器や古い楽器には特徴的な点が見られます。

19世紀頃までは、バルブを持たず非常に小さなベルを持つF管バストロンボーンが使用されていました。また、イギリスでは20世紀中頃まで、3度低いG管のバストロンボーンが使われていました。

バストロンボーンの類縁楽器としては、4度低いF管のコントラバストロンボーン、1オクターブ低いB♭管のコントラバストロンボーンがあります。

コントラバストロンボーン（F管）

バストロンボーンよりも太いボア、大きなベル、長大なスライドを持つ楽器です。バルブと迂回管はバストロンボーン同様に2つ持ちますが、迂回管の調性はメーカーによって異なり、標準は存在しません。長いスライドを操作するためのハンドルを備えることがあります。かつては、歌劇場のオーケストラピットでの操作性の悪さなどから衰退しましたが、ルネサンス・バロックから近代まで、この楽器を想定して書かれた楽曲も多く存在します。

コントラバストロンボーン（B♭管）

一部のメーカーでは、バストロンボーンよりも1オクターブ低いB♭管の楽器をコントラバストロンボーンと呼ぶことがあります。今日使用されることはまずありません。2重のスライドを持ち、通常の操作でスライドをバストロンボーンの2倍伸ばしたのと同じ効果が得られますが、非常に重く、速いパッセージを演奏することは非常に困難でした。スライドの代わりにバルブ機構を持つものもあり、チンバッソという類縁楽器によく似た形状をしています。

バストロンボーンが活躍する楽曲

バストロンボーンは、以下の楽曲で重要な役割を担っています。

バストロンボーン協奏曲
コダーイ：『ハーリ・ヤーノシュ』 - 第4曲「戦争とナポレオンの敗北」
ベートーヴェン：交響曲第9番
ニールセン：フルート協奏曲
ビゼー：『アルルの女』 - 「ファランドール」
ショパン：ピアノ協奏曲第2番

著名なバストロンボーン奏者

以下は、著名なバストロンボーン奏者の一部です。

アルミン・バッハマン (Armin Bachmann)
ベン・ヴァン・ダイク (Ben van Dijk)
ブレア・ボリンジャー (Blair Bollinger)
ブラント・アッテマ (Brandt Attema)
チャールズ・ヴァーノン (Charles Vernon)
クリストファー・ブルーベック (Christopher Brubeck)
デイブ・テイラー (David Tylor)
デンソン・ポール・ポラード (Denson Paul Pollard)
ドナルド・ハーウッド (Donald Harwood)
ダグラス・ヨー (Douglas Yeo)
ジョージ・カラン (George Curran)
ジョージ・ロバーツ (George Roberts)
ゲイリー・パガーノ (Gerry Pagano)
ハンス・シュトレッカー
ジェイムズ・マーキー (James Markey)
ジェフリー・レイノルズ (Jeffrey Reynolds)
ジョン・ロジャック (John Rojak)
ランディー・ホーズ (Randall Hawes)
ジークフリート・チースリク (Siegfried Cieslik)
シュテファン・シュルツ (Stefan Schulz)
ヨン・リンゲフェー (John Lingesjoe)

脚注

日本の[トロンボーン]]奏者については、[日本のトロンボーン奏者の一覧 を参照してください。

外部リンク

* Douglas Yeo Trombone Web Site（英語 / 一部分のみ日本語） - Discographyに公式参考音源があり、この楽器の音を聴くことができます。

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