アルルの女

ジョルジュ・ビゼー作曲の『アルルの女』（フランス語: L'Arlésienne）は、アルフォンス・ドーデの同名短編小説、およびそれを原作とする戯曲のために1872年に作曲された付随音楽です。全27曲から構成されており、特に2つの組曲が広く知られています。

あらすじ

物語は南フランスを舞台に展開されます。豪農の息子フレデリは、アルルの闘牛場で出会った女性に心を奪われます。フレデリにはヴィヴェットという婚約者がいましたが、彼女の献身的な愛もフレデリの心を動かすことはできませんでした。息子の衰弱を心配した母親は、アルルの女との結婚を許そうとしますが、ヴィヴェットはフレデリの幸せを願い身を引くことを申し出ます。ヴィヴェットの真心を知ったフレデリは、アルルの女を諦めヴィヴェットとの結婚を決意します。しかし、結婚式の夜、牧童頭のミティフィオが現れ、アルルの女と駆け落ちすることを告げます。それを聞いたフレデリは嫉妬に狂い、祝宴の賑わいの中、自ら命を絶ってしまうという悲劇的な結末を迎えます。

日本語訳（戯曲）

『アルルの女』は、多くの翻訳家によって日本語訳されており、以下のようなものがあります。

横山正幸訳（福永書店、1926年）
中山鏡夫訳（仏語研究社、1926年）
桜田佐訳（十字屋書店『ドーデー選集第2』、1949年／岩波文庫、1950年）
村上菊一郎訳（新潮文庫、1952年）
加藤道夫訳（角川文庫、1952年）

劇付随音楽

作曲は短期間で行われ、小編成のオーケストラしか使えなかったため、ビゼーは大変苦労したと伝えられています。初演時の評価は芳しくありませんでしたが、6年後の再演で大成功を収めました。しかし、その時ビゼーはすでに亡くなっていました。

楽器編成

ハープ、フルート2、オーボエ（コーラングレ）1、クラリネット1、ファゴット1、アルト・サクソフォーン1、ナチュラルホルン1、ヴァルヴ・ホルン1、ティンパニ、プロヴァンス太鼓、ピアノ、ハルモニウム、弦五部（第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ1、チェロ5、コントラバス2）、合唱

組曲

一般的に知られているのは、劇付随音楽から選ばれた2つの組曲です。

第1組曲

ビゼー自身が、通常のオーケストラ向けに編成を拡大して組曲としたものです。1872年11月10日に初演され、成功を収めました。

1. 第1曲『前奏曲』：劇音楽の序曲から。プロヴァンス民謡『3人の王の行列』を基にした旋律が用いられています。アルト・サクソフォーンによる旋律は、フレデリの弟の知的障害を表す動機です。
2. 第2曲『メヌエット』：劇音楽の間奏曲から。
3. 第3曲『アダージェット』：劇音楽のメロドラマの中間部から。
4. 第4曲『カリヨン』：劇音楽の導入曲とメロドラマ前後部から。三部形式で構成されています。

第2組曲

ビゼーの死後、1879年に友人のエルネスト・ギローによって完成されました。ギローはビゼーの管弦楽法を熟知しており、他の楽曲も加え、第1組曲と同じようなオーケストラ編成で編曲しました。

1. 第1曲『パストラール』：劇音楽の導入曲と合唱から。ギローによって三部形式に構成し直されました。
2. 第2曲『間奏曲』：劇音楽の導入曲から。アルト・サクソフォーンによる旋律は、歌曲『神の子羊』としても知られています。
3. 第3曲『メヌエット』：歌劇『美しきパースの娘』の曲をギローが転用、編曲したものです。フルートとハープによる美しい旋律が特徴です。
4. 第4曲『ファランドール』：劇音楽のファランドールなどから構成された終曲。プロヴァンス民謡『3人の王の行列』と『馬のダンス』が組み合わされ、熱狂的なクライマックスを築きます。

第2組曲の楽器編成

通常の二管編成に拡大され、金管楽器が大幅に追加されています。ハルモニウムは省かれ、ハープが加えられました。
フルート2（第2ではピッコロ持ち替え）、オーボエ2（コーラングレ持ち替え）、クラリネット2、ファゴット2、アルト・サクソフォーン1、ホルン4（第2組曲の間奏曲では3・4番ホルンにヴァルヴ付き）、コルネット2、トランペット2（省略可）、トロンボーン3、ティンパニ、スネアドラム（第1のみ）、シンバル、バスドラム、プロヴァンス太鼓（第2のみ）、ハープまたはピアノ、弦五部

備考

付随音楽、第1組曲、第2組曲ともに、サクソフォーンをオーケストラで用いた初期の楽曲として知られています。組曲はサクソフォーンなしでも演奏可能ですが、今日ではあまり行われていません。

外部リンク

 アルルの女の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
アルルの女第1組曲の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
アルルの女第2組曲の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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