バスマチ蜂起

バスマチ蜂起：中央アジアにおける反ソビエト運動

1920年代初頭、中央アジアではソビエト政権に対する大規模な反乱、バスマチ蜂起が勃発しました。この運動は、第一次世界大戦中のムスリム兵士の強制徴用への反発から端を発し、その後、ソ連による中央アジア支配への抵抗へと発展していきました。フェルガナ盆地、ブハラ、東ブハラ（現在のタジキスタン）、ホラズムの4地域で、それぞれ異なる様相を呈しながら展開されたこの反乱は、ロシア内戦と密接に関連し、1918年から1924年にかけて最盛期を迎えました。

バスマチ運動の展開と背景

「バスマチ」とは、テュルク系言語で「襲撃者」を意味する言葉で、ロシア帝国、そしてソ連当局が中央アジアの反乱勢力を総称する際に用いた呼称です。この運動には、遊牧民の部族長、地方有力者、宗教指導者、匪賊、近代化を目指すジャディード運動の活動家など、様々な層が参加しました。

バスマチ運動の特徴として、地域的な多様性と、指導者の多様な背景が挙げられます。単一のイデオロギーや組織の下に統一された運動ではなかった点も重要な特徴です。しかし、ソ連支配への抵抗という共通の目的によって、様々な勢力が集結しました。中には、ブハラ・アミール国の最後のアミールであるサイイド・アリム・ハンや、オスマン帝国の元陸相エンヴェル・パシャといった著名人も参加し、汎テュルク主義や汎イスラーム主義的な色彩を帯びる側面もありました。

各地域の戦闘

フェルガナ盆地では、1917年にコーカンドでトルキスタン自治政府が樹立されましたが、1918年に赤軍によって解体されました。これ以降、旧自治政府の残党を中心とした武装闘争が展開され、複数のクルバシュ（司令官）が率いる反乱軍がソ連軍と激しく戦闘を繰り広げました。

ブハラでは、1920年に赤軍の支援を受けた青年ブハラ人勢力がアミール政権を打倒し、ブハラ人民ソビエト共和国を樹立しました。しかし、失脚したアミール・サイイド・アリム・ハンは反ソ活動を続け、エンヴェル・パシャも加わりましたが、1922年にエンヴェル・パシャが戦死すると、バスマチ勢力は山岳地帯でのゲリラ戦に転じ、次第に勢力を弱めていきました。

ホラズムでも、赤軍の支援を受けた青年ヒヴァ人勢力がヒヴァ・ハン国の支配者を追放し、ホラズム人民ソビエト共和国を樹立しました。

日本との関わり

日本軍は、シベリア出兵を機に、中央アジアのバスマチ勢力と接触を試みました。特に、日本軍情報部はムスリム系民族の指導者らと連携を図り、情報を収集したり、支援を行ったりしたとされています。この日本軍の活動は、ソ連崩壊後に公開された文書によって明らかになりつつあります。しかしながら、その規模や影響については、いまだに研究が続けられています。

バスマチ運動の評価

ソ連時代、バスマチ蜂起は反動的な反革命運動として否定的に評価されてきました。しかし、ソ連崩壊後、中央アジア諸国では、民族独立運動の一環として再評価する動きも見られます。また、バスマチは、しばしばオリエンタリズム的な視点から、ソ連版西部劇の題材としても扱われてきました。

まとめ

バスマチ蜂起は、中央アジアの歴史において重要な出来事であり、ソ連支配への抵抗、民族意識、宗教、そして大国間の思惑が複雑に絡み合った、多角的な側面を持つ運動でした。その歴史的評価は、現在もなお、研究者たちの間で議論が続けられています。今後の研究によって、より詳細な事実解明と、多様な視点からの理解が進むことが期待されます。

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