バッファロー・セイバーズ

アメリカ合衆国ニューヨーク州バッファローを本拠とする、ナショナルホッケーリーグ（NHL）加盟のプロアイスホッケーチーム。1970年の創設以来、NHLの舞台で多くのスター選手を輩出し、熱狂的なファンベースを持つ一方、2024年現在、NHLにおいて最も長期間にわたりプレーオフ進出および1回戦突破から遠ざかっているチームという、厳しい現実に直面している。

チームの黎明期と「フレンチ・コネクション」

セイバーズは、AHLで実績を重ねていたバッファロー・バイソンズを前身として、1970年にNHLに参入した。創設初年度、ドラフト全体1位で後の殿堂入りセンター、ジルベール・ペローを獲得。ペローはルーキーイヤーから目覚ましい活躍でカルダー記念賞を受賞したが、チームはまだ発展途上だった。

翌1971-72シーズンにはリック・マーティン、シーズン終盤にはルネ・ロベールがチームに加わり、ペロー、マーティン、ロベールのフランス系カナダ人トリオは、映画のタイトルにちなんで「フレンチ・コネクション」としてファンに愛された。彼らは破壊的な攻撃力で知られるようになり、1972-73シーズンには初のプレーオフ進出を達成。しかし、この年の優勝チームであるモントリオール・カナディアンズの前に屈した。

1973-74シーズンは、ペローの負傷や主力ゴーリーのロジャー・クロージャーの離脱に加え、チームの精神的支柱であった大ベテランのティム・ホートンが交通事故で急逝するという悲劇に見舞われ、プレーオフ進出を逃した。ホートンの死はチームとコミュニティに深い悲しみをもたらした。

スタンレー・カップ決勝進出とハシェックの時代

「フレンチ・コネクション」が円熟期を迎えた1974-75シーズン、チームはレギュラーシーズンで圧倒的な強さを見せ、ディビジョン首位に立った。プレーオフでも勝ち進み、創設わずか5年でスタンレー・カップファイナルに進出。フィラデルフィア・フライヤーズとのシリーズ第3戦は、会場の高温多湿により濃霧が発生したことから「霧の試合」として語り草になっている。シリーズは2勝4敗で敗れたが、セイバーズはその存在感を強く印象付けた。1975-76シーズンには、ソ連のクリリヤ・ソビエトフとのエキシビションゲームで、NHLチームとして唯一勝利を収めるなど、その実力は国内外に知れ渡った。

1970年代後半から1980年代にかけて、チームはスコッティ・ボウマンがヘッドコーチ兼ゼネラルマネージャーを務めるなど体制変更を経て、プレーオフ常連となるも、カンファレンス決勝やディビジョン準決勝で敗退を繰り返した。フレンチ・コネクションはメンバーのトレードにより解消され、マイク・フォリグノ、フィル・ハウズリー、デイブ・アンドレチャックといった新たなスター選手がチームを牽引したが、プレーオフの壁を破るには至らなかった。

1990年代に入ると、アレクサンドル・モギルニー、デール・ハワーチャックらが加入。特に1991-92シーズン途中に加入したパット・ラフォンテーヌは、モギルニーと共にリーグ屈指の得点力を誇った。1992-93シーズンにはラフォンテーヌがアメリカ人選手歴代最多となる148ポイント、モギルニーがリーグ最多タイの76ゴールを記録。プレーオフ1回戦ではボストン・ブルーインズをスイープで下し、その第4戦でのブラッド・メイの決勝点に対する実況アナウンサー、リック・ジャンヌレの絶叫「メイデー！」は今も語り継がれている。しかし、この年もカンファレンス準決勝で敗退。

怪我に悩まされる主力選手が続出する中、1993-94シーズンにはゴーリーのドミニク・ハシェックが頭角を現し、ベジーナ賞を受賞。彼はその後、「ドミネーター」としてリーグ最高のゴーリーの地位を確立し、チームを牽引する存在となる。1990年代後半、ハシェックはベジーナ賞とハート記念賞を何度も受賞するなど圧倒的なパフォーマンスを披露し、チームを再び強豪へと押し上げた。

栄光への挑戦と近年の苦闘

ハシェックの孤軍奮闘とも言える活躍により、セイバーズは1998-99シーズンにスタンレー・カップファイナルへ進出。ダラス・スターズとの激闘の末、第6戦で迎えたトリプルオーバータイムにブレット・ハルに決勝ゴールを許し、シリーズ敗退となった。この決勝点は、ハルのスケートがゴール・クリーズ内にあったとして、当時のルール下では無効と解釈されるべきだという論争を呼び、現在でも語られることがある。このチームには、ミロスラフ・サタン、スチュ・バーンズ、マイケル・ペカらがいた。

ファイナル進出後もハシェックは輝きを放ち続けたが、主力選手の流出や財政的な問題がチームを揺るがす。特に2002年にはオーナーが不正流用で逮捕され、チームは一時リーグの管理下に置かれ、破産申請を経て新たなオーナーに買収されるという混乱に見舞われた。この時期、ハシェックを含む多くのベテラン選手がチームを去り、再建が急務となった。

新体制の下、ダニエル・ブリア、クリス・ドュリューリー、ライアン・ミラーといった若手・中堅選手が成長し、2005-06、2006-07シーズンにはカンファレンス決勝に2年連続で進出。特に2006-07シーズンはリーグ最高のレギュラーシーズン成績を収めプレジデンツトロフィーを獲得するなど、再び頂点に迫る勢いを見せた。しかし、いずれもあと一歩でスタンレー・カップファイナル進出を逃し、中心選手の移籍もあって再びチームは低迷期に入った。

2010年代に入り、テリー・ペグラが新たなオーナーとなるなど変化はあったが、チーム成績は低迷が続く。再建を試みるも、キャプテンを含む主力選手をトレードで放出する一方、チームは長期間プレーオフから遠ざかり、NHLにおける連続プレーオフ未進出記録を更新し続けている。2023-24シーズンには、ベテランのジェフ・スキナーがプレーオフ出場経験がないまま通算1,000試合出場を達成するという、チームの現状を象徴する出来事もあった。

過去には多くの伝説的な選手たちが在籍し、スタンレー・カップにあと一歩まで迫ったバッファロー・セイバーズ。長期低迷から抜け出し、再び栄光の時代を築くことが、現在のチーム最大の課題となっている。

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