バド・シャンク

バド・シャンク：ジャズ界の多才な巨匠

バド・シャンク（1926年5月27日 - 2009年4月2日）は、アメリカを代表するアルト・サックス奏者、フルート奏者です。彼の音楽キャリアは、1950年代初頭にスタン・ケントンのイノヴェーション・イン・モダン・ミュージック・オーケストラでリード・アルトとフルートを担当し、その名声を確立したことから始まりました。

多彩な音楽活動

シャンクは、その後10年間、様々な小規模ジャズ・コンボで活動し、その才能を発揮しました。1960年代には、ハリウッドのスタジオ・ミュージシャンとして活躍し、数々の映画やテレビ番組の音楽制作に参加しました。1970年代から1980年代にかけては、L.A.フォアの一員として定期的に演奏し、その音楽性はさらに深化しました。

彼は、最終的にフルートから離れ、アルト・サックスによるジャズ演奏に専念しましたが、テナー・サックスやバリトン・サックスでも録音を行っています。彼の最も有名な録音の一つは、テレビドラマ『Mickey Spillane's Mike Hammer』のテーマ曲として使用された「Harlem Nocturne」のバージョンでしょう。また、1965年にママス&パパスが録音した「夢のカリフォルニア」でのアルト・フルート・ソロも広く知られています。

生涯と音楽への探求

オハイオ州デイトンで生まれたシャンクは、幼少期にクラリネットを始め、ノースカロライナ大学入学前にサックスに転向しました。大学在学中には「Pi Kappa Alpha」という友愛会に入会しています。1946年、彼はチャーリー・バーネットとの仕事を経て、スタン・ケントンのためにウエストコースト・ジャズ・シーンへと進出しました。また、ワールドミュージックへの強い関心を持ち、1953年と1954年にはローリンド・アルメイダと共にブラジルの影響を受けたジャズを演奏しました。

1958年には、エツィオ・レオーニ（別名レン・マーサー）が指揮するイタリアのジャズ・オーケストラとイタリアでレコーディングを行い、アメリカ人ジャズ・ミュージシャンとして初の快挙を成し遂げました。この業績は、後にチェット・ベイカーなど、他のミュージシャンたちがマエストロ・レオーニとミラノでレコーディングを行う先駆けとなりました。

シャンクは、1958年と1960年にブルース・ブラウン監督による2本のサーフィン映画、『スリッピー・ウェット』と『ベアフット・アドベンチャー』のサウンドトラックも担当しました。1962年には、インドの作曲家でありシタール奏者のラヴィ・シャンカルと協力し、ジャズとインドの伝統音楽を融合させるという新たな試みに挑戦しました。

L.A.フォアの結成と晩年

1974年、シャンクはレイ・ブラウン、シェリー・マン（後にジェフ・ハミルトンに交代）、ローリンド・アルメイダと共にグループ「L.A.フォア」を結成し、1982年まで精力的にレコーディングとツアーを行いました。シャンクは、ラテン風味のジャズとチェンバー・ジャズの普及に大きく貢献しました。また、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、ニュー・アメリカン・オーケストラ、ジェラルド・ウィルソン・ビッグ・バンド、スタン・ケントンのネオフォニック・オーケストラ、デューク・エリントンなど、様々なオーケストラとも共演しました。

2005年には、スタン・ケントンのネオフォニック・オーケストラの創立40周年を記念して、ロサンゼルスでバド・シャンク・ビッグ・バンドを結成しました。彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画『Bud Shank: Against the Tide (Portrait of a Jazz Legend)』は、グラハム・カーターによって製作・監督され、2008年にDVDとしてリリースされ、オーロラ賞金賞を含む4つのインディーズ映画賞を受賞しました。

新しいアルバムのレコーディングを終えてカリフォルニア州サンディエゴから帰宅した翌日の2009年4月2日、シャンクはアリゾナ州ツーソンの自宅で肺血栓塞栓症により息を引き取りました。彼の音楽は、今もなお多くの人々に愛され、影響を与え続けています。

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