バハマの歴史

バハマの歴史は、カリブ海の島々における独特な変遷をたどってきました。先住民の時代から、ヨーロッパ列強による植民地化、そして独立に至るまでの過程は、この地域の文化、経済、社会に深い影響を与えてきました。

先史時代：ルカヤン人の時代

バハマ諸島に最初に到達したのは、紀元1千年紀のことです。アラワク語族に属するタイノ族の一派、ルカヤン人が、500年から800年頃にカリブ海の他の島々から移住してきました。彼らの祖先は南アメリカ本土から来ており、アラワク語族は南米の広範囲に存在しました。

ルカヤン人は、カヌーを用いてイスパニョーラ島やキューバからバハマへと移動しました。移住経路は、イスパニョーラ島からカイコス諸島、あるいはキューバ東部からグレート・イナグア島など、いくつかの説があります。ウィリアム・キーガンは、イスパニョーラ島かキューバからグレート・イナグア島への経路が最も可能性が高いと示唆しています。

ルカヤン人は、約800年間かけてバハマ諸島で人口を増やし、約4万人に達しました。最初にヨーロッパ人と接触した時、人口密度が最も高かったのはバハマ中南部で、北へ行くほど人口密度は減少していました。この分布は、移住のパターンと北部諸島への定住が比較的遅かったことを示唆しています。

コロンブスによる発見とスペインの支配

1492年10月12日、クリストファー・コロンブスがグアナハニ島（現在のサン・サルバドル島）に上陸し、バハマの有史時代が始まりました。コロンブスは、この島をスペイン領と宣言しました。コロンブスが最初に発見した島の場所については異説もありますが、多くの歴史家はワトリング島（後にサン・サルバドル島に改名）をコロンブスのサン・サルバドル島とみなしています。

スペインは、バハマ人を奴隷として利用することに興味を持ちましたが、他の関心は薄かったようです。ルカヤン人のほぼ全員が、その後の30年間で他の島々へ連行され、1520年には残った11人がイスパニョーラ島に移住させられました。その後、バハマ諸島は130年間、無人のままとなりました。金が産出せず、人口もいなくなったバハマは、スペインにとって関心が薄れ、名目上の領有のみが続きました。

イギリスの植民地時代

バハマに最初のヨーロッパ人が定住したのは、1648年、エルーセラ島でのことです。清教徒で共和主義者であるバミューダからの植民者たちが、宗教と政治の自由、そして経済的な機会を求めて移住してきました。しかし、初期の植民地は、痩せた土地、入植者間の争い、スペインとの紛争により苦戦しました。1666年には、ニュー・プロビデンス島にも入植者が定住し、やがてバハマの中心地となっていきました。

初期のバハマの経済活動は、難破船のサルベージが大きな割合を占めていました。バハマはヨーロッパとカリブ海を結ぶ航路の要所にあったため、難破船が頻発したのです。バハマ人は難破船の分解を巡ってスペインと対立し、私掠船を雇ってスペイン船を攻撃しました。

海賊の時代

17世紀末から18世紀初頭にかけて、バハマは海賊の拠点となりました。イギリスの私掠船員が海賊に転身し、ナッソーを拠点に活動しました。この時期には、黒髭（エドワード・ティーチ）やスティード・ボネットといった有名な海賊も現れました。バハマは、11年間「私掠船共和国」と呼ばれる状態となり、イギリスの統治が及ばない地域となりました。

1718年、イギリスはウッズ・ロジャーズをバハマ総督に任命し、海賊鎮圧を開始しました。ロジャーズは海賊への恩赦を宣言し、多くの海賊が投降しましたが、一部は抵抗を続けました。最終的に、ロジャーズは海賊を鎮圧し、イギリスの支配を確立しました。

アメリカ独立戦争と奴隷制

アメリカ独立戦争中、バハマは一時的にスペインに占領されましたが、イギリスとアメリカの王党派によって再占領されました。アメリカ独立革命後、多くの王党派がバハマに移住し、綿のプランテーションを開発しました。このとき、多くのアフリカ人が奴隷としてバハマに連れてこられました。

イギリスは1807年に奴隷貿易を廃止しましたが、奴隷制自体は1834年まで続きました。奴隷解放後、多くの解放奴隷が小規模な農地を耕作しました。

近代バハマ：独立と発展

20世紀に入ると、バハマは観光産業とオフショア金融業の発展を遂げました。1940年には最初の空港が開港し、観光客の増加を促進しました。第二次世界大戦中は連合国のカリブ海における活動拠点となり、戦後には観光地としての人気が高まりました。

1973年7月10日、バハマはイギリスから独立し、英連邦王国の一員となりました。独立後は、観光産業とオフショア金融業を基盤とした経済発展を遂げましたが、教育、医療、住宅、麻薬密輸などの問題も抱えています。

政治の発展

現代政体への発展は、第二次世界大戦後に始まりました。1950年代に初の政党が結成され、1964年には自治政府が成立しました。1973年には完全独立を果たし、リンデン・ピンドリングが初代首相（後に首相）に就任しました。

バハマの歴史は、先住民の時代から、ヨーロッパの植民地時代、海賊の隆盛、独立を経て、今日の姿に至るまで、複雑な変遷をたどってきました。この長い歴史は、バハマの文化、経済、そして社会構造に大きな影響を与えてきました。

今後もバハマは、過去の遺産を尊重しつつ、持続可能な発展を目指していくことでしょう。

もう一度検索