バラク (士師)

バラクは、旧約聖書に登場する重要な人物の一人であり、士師として知られています。彼の名前「バラク」はヘブライ語で「電光、稲妻」を意味し、その力強さを象徴しています。バラクは、イスラエルのナフタリ族の出身で、アビノアムの子として記録されています。

士師エフドの死後、イスラエル人は再び神の教えから離れ、悪を行うようになりました。その結果、彼らはカナン人の王ヤビンによって20年間も虐げられることになります。この苦境の中、神は女預言者デボラを通してイスラエルを救うべく、バラクを召命します。

デボラはバラクに、タボル山に1万人のイスラエル軍を招集し、カナン軍と戦うように命じます。カナン軍は将軍シセラが率いる、鉄の戦車900両を擁する強力な軍隊でした。バラクは、デボラが共に戦場に行くことを条件に、この命令に従います。デボラはバラクの要求を受け入れ、しかし同時に、シセラは女によって殺されるという預言を告げます。

カナン軍は、キション川のほとりに集結します。イスラエル軍は軽装備でしたが、バラクはデボラの言葉を信じ、タボル山を下りてカナン軍に突撃します。その時、キション川の流れが激しくなり、カナン軍の戦車は泥にはまって身動きが取れなくなります。イスラエル軍は、この混乱に乗じてカナン軍を打ち破り、全滅させます。

将軍シセラは戦場から逃げ出し、ヤイルという人物の天幕に身を隠します。しかし、ヤイルはシセラが寝ている隙に、天幕用の釘を彼のこめかみから地面に打ち付けて殺害します。預言通り、シセラは女によって殺されたのです。

この勝利によって、イスラエルはその後40年間、平和な時代を過ごすことができました。士師記5章には、この戦勝を記念して歌われた「デボラの歌」が収められています。

新約聖書では、バラクは信仰の模範者として言及されています。ヘブル人への手紙には、信仰によって成し遂げた偉業を遂げた人物の一人として、バラクの名前が挙げられています。

バラクの物語は、神への信仰と勇気が、困難な状況を乗り越える力となることを教えてくれます。彼の生涯は、聖書の中で重要な教訓を伝えるものとして、今もなお多くの人々に影響を与えています。

参考文献

『新共同訳聖書』日本聖書協会
『小型版　新共同訳聖書辞典』 キリスト新聞社、1997年
『キリスト教人名辞典』 日本基督教団出版局、1986年
『聖書辞典』 日本基督教団出版局、1988年

関連項目

聖書の登場人物の一覧
士師記

もう一度検索