バーティカルバー

バーティカルバーとブロークンバー：多様な分野で活躍する縦線記号

この文書では、コンピューティング、数学、物理学など様々な分野で使用される記号「|」、一般的にバーティカルバー（vertical bar）と呼ばれる縦線について解説します。Unicodeでは“バーティカルライン (vertical line)”と名付けられており、縦線という名称でも知られています。この記号は、自然言語での使用例は少ないものの、専門的な分野では重要な役割を果たしています。

バーティカルバー：多様な用途

バーティカルバーは、そのシンプルな形状とは裏腹に、幅広い用途を持っています。

数学における利用

数学においては、バーティカルバーは複数の意味を持ちます。

絶対値: `|x|` のように用いられ、x の絶対値を表します。
集合の定義: `{x | x < 2}` のように、条件を満たす要素の集合を定義する際に使用されます。この場合、`|` は「そのような」という意味を持ちます。
条件付き確率: `P(A|B)` は、事象 B が起こったという条件下で事象 A が起こる確率を表す条件付き確率を示します。
約数: `d|n` は、d が n の約数であることを意味します。

物理学における利用

物理学、特に量子力学では、ブラケット記法において重要な役割を果たします。例えば、`<φ|ψ>`、`<φ|`、`|ψ>` は、それぞれブラベクトル、ブラ、ケットを表し、量子状態や演算子の表現に用いられます。

コンピュータサイエンスにおける利用

コンピュータサイエンスの分野では、バーティカルバーは様々なコンテキストで用いられています。

パイプ: UNIX 系オペレーティングシステムや MS-DOS では、パイプライン処理におけるデータの転送を表すパイプ記号として使用されます。
論理演算: C言語や、C言語の影響を受けた多くのプログラミング言語では、単一のバーティカルバー `|` はビット単位の OR 演算子、2つのバーティカルバー `||` は論理和演算子を意味します。
正規表現とBNF記法: これらの文法では、`|` は「または」を意味し、左右いずれかのパターンにマッチすることを示します。
文字列連結: PL/I や SQL などの一部の言語では、`||` が文字列連結演算子として使用されます（ただし、全てのSQLエンジンでサポートされているわけではありません）。
* MediaWiki: ウィキテキストにおいて、内部リンクの表示名と実際のページ名を区別する際に用いられます。

国際音声記号

国際音声記号 (IPA) では、歯吸着音を表す記号として使用されます。ただし、Unicode では、この用途には U+01C0 latin letter dental click 「ǀ」が割り当てられています。

ブロークンバー：バーティカルバーの変種

バーティカルバーの中央が切断された記号「¦」は、ブロークンバー (broken bar) あるいはブロークンバーティカルバー (broken vertical bar) と呼ばれます。日本語では破断線と呼ばれることもあります。

歴史的には、バーティカルバーとラテン文字の I や l との区別のために作られた別字形でした。そのため、古いレンダリングエンジンでは、バーティカルバーをブロークンバーのグリフで表示することがあります。現在では、Unicode や Latin-1 では独立したコードポイントが割り当てられています。

まとめ

一見シンプルなバーティカルバーは、その用途の広さから、様々な分野で重要な役割を果たしていることがわかります。その歴史やUnicodeにおける扱い、そしてブロークンバーとの関連性を知ることで、この記号への理解がさらに深まるでしょう。

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