バーニア制御

バーニア制御について

バーニア制御とは、主要な制御機器に加え、補助的な制御機器を活用することによって、出力の変動を抑えたり、より精細な調整を行う手法を指します。この技術は、主に鉄道の電気車における速度制御の分野で利用されることが多く、特に電動機の電圧制御においてその効果を発揮します。バーニアという名称は、測定工具であるノギスの補助目盛に由来しています。

バーニア抵抗制御の概要

19世紀末に登場した電気鉄道では、直流電動機が主に使われてきました。この電動機は起動時に高いトルクを発揮し、速度制御も容易にも関わらず、20世紀末以降はVVVFインバータ制御による交流電動機が主流となります。しかし、直流電動機の速度制御においては抵抗制御方式が一般的に用いられてきました。抵抗制御方式は、コストが安く、導入も簡単ではありますが、いくつかの課題があります。

ここで登場するのがバーニア抵抗制御です。これは、抵抗制御のデメリットを軽減するために考案された方法です。具体的には、抵抗器を多数の段階に分けて切り替えることで、電動機に加わる電圧や電流の変動を小さくすることができるのです。

抵抗制御の課題

抵抗制御では、定格電圧を一気にかけると、電流やトルクが過大になり、これを防ぐために電圧を下げて始動します。この方法は主に、電動機に直列に配置した抵抗器の使用によって実現されます。しかし、電動機の速度が上がるにつれて電流が下がり、これに伴ってトルクの変動が生じます。抵抗制御の場合、このトルク変動は段階的に変わるため、乗り心地の悪化や空転を引き起こす要因となります。

バーニア抵抗制御の利点

バーニア抵抗制御では、主抵抗器に加えて副抵抗器を組み合わせて、段階を増やし、抵抗値の調整を行います。これにより、抵抗値の細かな制御を実現し、トルクの急変を防ぐことができます。高い粘着力を確保しつつ、安定した加速性能を持つ抵抗制御を実現したのです。この技術は特に、貨物列車や高加速を必要とする電車で広く利用されてきました。

バーニア連続位相制御の概念

20世紀末には交流電気車も普及し、こちらでは抵抗制御の代わりに連続位相制御が行われるようになりました。位相制御は電圧を連続的に変化させることができ、トルクの変動が無い特性を有しますが、高調波ノイズの発生が課題となりました。バーニア連続位相制御は、この高調波ノイズの低減を図るための一手法です。

位相制御の仕組み

位相制御では、特定のタイミングで電流を導通させることによって表現される平均電圧を調整します。電流の導通時間を調整することで電圧を連続的に変えることが可能になり、粘着性能が向上しますが、波形の乱れによって高調波が発生する問題も抱えることになります。バーニア連続位相制御では、変圧器を不等分割し、少ない素子数で高精度の制御を行う仕組みが採用されました。

日本における事例

日本国有鉄道では、961形電車においてバーニア連続位相制御が導入され、新幹線の直通運転を考慮した試験も行われました。その結果、962形や200系においても同様の技術が採用され、機器構成の簡素化が進みました。その後の技術進化により、バーニア連続位相制御は現代の車両には用いられなくなりましたが、電気鉄道技術の発展には寄与した技術であると言えるでしょう。

バーニア制御は、電気鉄道における速度制御の重要な技術であり、その発展は今後の技術革新にもつながる可能性があります。

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