パイステ

パイステ（PAiSTe）について

パイステは、スイスに本拠を置く世界有数のシンバルメーカーです。ジルジャン（Zildjian）、セイビアン（SABIAN）と並び、世界三大シンバルメーカーとして知られています。その歴史は1901年にロシアで始まり、幾多の移転と変遷を経て、現在のスイスへと至っています。

歴史

パイステの創業者であるトーマス・パイステは、エストニア出身の両親を持つロシア人でした。1901年にロシアで創業したものの、1917年のロシア革命の影響を受け、エストニアへと移転しました。その後、トーマスの息子のミヒケル・パイステの時代に、第二次世界大戦の勃発によりポーランド、ドイツへと拠点を移し、1957年にスイスへと落ち着き、現在のPAiSTe社へとつながっています。2003年からは、ミヒケルの孫にあたるエリック・パイステが代表を務めています。

本社はスイスにありますが、ドイツとアメリカにもオフィスを展開しており、グローバルな事業展開を行っています。

ブロンズ

パイステのシンバルは、その独特な合金の選択によって特徴づけられます。ジルジャンやセイビアンが主にB20ブロンズ（銅80％と錫20％の合金）を使用するのに対し、パイステはCuSn20（B20ブロンズ）、CuSn8（銅92％と錫8％の合金）、そして独自のSignature Bronzeの3種類を使い分けています。

• - CuSn20（B20ブロンズ）: 一般的なシンバルに使われる合金で、豊かで伸びやかなサウンドが特徴です。
• - CuSn8（B8ブロンズ、2002ブロンズ）: 他社では廉価版に使用されることが多いですが、パイステはこれを主力製品に使用しています。明るく、力強いサウンドが特徴です。
• - Signature Bronze: パイステが独自に開発した合金で、正確な組成は公表されていませんが、特許情報から錫の割合が14.7〜15.1％で、微量のリンが含まれていることが明らかになっています。

パイステのアーティスト・リレーションズ担当部長であるクリスチャン・ウェンゼルは、「錫の割合が上がると、シンバルの音は豊かで伸びやかなものになる」と述べています。一方、ジルジャンのポール・フランシスは「錫の割合が下がると、音が高く、明るく、はっきりしたものになる」と説明しています。この合金の選択により、パイステは幅広いサウンドのシンバルを提供しています。

製造方法

シンバルの製造方法も、パイステはジルジャンやセイビアンとは大きく異なります。ジルジャンとセイビアンは、自社で合金を製造し、それを打ち伸ばしてから加工するのに対し、パイステは外部の合金メーカーからシート状の合金を購入し、それを打ち抜いて加工します。この製法により、個体差が少なく、品質が安定したシンバルを製造できる点が特徴です。

シンバルライン

パイステは、幅広いラインナップのシンバルを提供しています。代表的なものとして、以下のシリーズがあります。

• - Signature Dark Energy, Signature Traditionals, Formula 602 Modern Essentials, Formula 602 Classic: 最高級ラインで、高品質なサウンドを求めるミュージシャンに支持されています。
• - Signature, Signature Precision, Signature Reflector, Masters: プロフェッショナルなミュージシャンにも愛用される高級ラインです。
• - 2002, RUDE: ロックドラマーを中心に人気のあるシリーズで、力強く明るいサウンドが特徴です。特に2002シリーズは、1971年の発売当時、「未来的なサウンド」として注目され、21世紀に入っても世界中で高い人気を誇っています。

かつては、ニッケルシルバーを使用したDixie、Stanople、101などの製品も製造していましたが、1965年に初めてCuSn8を採用したStambul 65を発売。その後も、404、505、1000、2000、3000、Innovations、Dimensions、Sound Creation、AlphaといったCuSn8を使用したシリーズを展開しました。また、シンバル全体を黒く塗ったVisionsや、青、赤、緑などの色を塗ったColorsound 5などのシリーズも存在しました。

パイステは、カップのない「フラット・ライド」、ボトムシンバルの縁を波打たせた「サウンド・エッジ・ハイハット」、シンバルの裏側にカップを張り出させた「ノヴォ・チャイナ」など、斬新なアイデアを取り入れたシンバルを開発し、競合他社に大きな影響を与えました。

現行製品ライン

現在販売されている主な製品ラインは以下の通りです。

• - Signature Bronze製: Signature Dark Energy, Signature Traditionals, Signature, Signature Precision, Signature Reflector
• - CuSn20製: Formula 602 Modern Essentials, Formula 602 Classic, Masters
• - CuSn8製: 2002, 2002 Big Beat, RUDE, Giant Beat, 900 Series, Color Sound 900, PST X, PST 8, PST 7, PST 5
• - ブラス製: PST 3, 101 Brass

シグネチャー・モデル

パイステは、多くの著名なドラマーとのコラボレーションによるシグネチャー・モデルも展開しています。以下はその一例です。

• - ダル・ジョーンズ：PST X "DJs 45 Crash", PST X "DJs 45 Hats", PST X "DJs 45 Ride"
• - ダニー・ケアリー：Signature Dry Heavy Ride "Monad"
• - カール・パーマー：Signature Duo Ride "Vir2osity"
• - ジョン・ロビンソン：2002 Swish Ride "Signature Groove", Masters Deep Ride "Signature Groove"
• - デイヴ・ロンバード：RUDE Power Ride "Reign"
• - スチュワート・コープランド：Signature Combo Crisp Hi-Hat "Rhythmatist", Signature Blue Bell Ride "Rhythmatist"
• - ニコ・マクブレイン：Signature Reflector Bell Ride "Powerslave"
• - アキレス・プリースター：2002 Giga Bell Ride "Psychoctopus"
• - ジョン・ドルマヤン：RUDE Mega Power Ride "Eclipse"
• - アレックス・ヴァン・ヘイレン：2002 Big Ride "Reverend Al's"
• - レオン・チャンクラー：Masters Crisp Ride "Rosie"

主なエンドーサー

パイステは、世界中の多くの著名なドラマーに愛用されています。海外だけでなく、日本国内でも多くのアマチュア、プロドラマーに支持されています。

パイステは、その革新的な製品と卓越したサウンドクオリティで、世界の音楽シーンに貢献し続けています。

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