パクモドゥパ政権

パクモドゥパ政権の歴史

概要

パクモドゥパ政権は、1358年から1480年にかけてチベットを統治した政権であり、チベット仏教のカギュ派に属するパクモドゥ派から派生したものです。この政権は、元の時代に衰退したサキャ派政権を引き継ぎ、やがてリンプン派やその後のツァンパ政権に取って代わられました。

パクモドゥ派の誕生

パクモドゥ派は、カム地区出身の貴族ドルジェ・ギェルポ（1110-1170）が創設者です。彼は師であるガムポパからカギュ派の長に任命され、ダクラ・ガムポ寺院を任された後、1158年にパクモドゥ地方に移り住み、デンサ・ティル寺院を設立しました。このような流れを経て、彼の宗派は「パクモドゥ派」として知られるようになりました。この時期、カギュ派は複数の亜流に分かれ、現在盛んに活動しているカルマ派とは異なる系統となりました。

サキャ派政権とその変遷

13世紀の初め、モンゴル帝国は内部の紛争が絶えず、さまざまな宗派は自身を守る保護者を探さざるを得ませんでした。パクモドゥ派もフレグとの関係を模索しましたが、彼の死に伴い、結局、サキャ派がクビライを保護者に選んで支配権を握ることになりました。時が経つにつれ、パクモドゥ派の拠点であるデンサ・ティル寺院も発展し、権力を強めていきました。

クビライはサキャ派に多くの権限を与えつつも、地方自治を行わせるために「十三万戸」の制度を設けました。1322年、パクモドゥ派のリーダーも万戸長に就任し、彼らの権力基盤をさらに強固にしていきました。

パクモドゥパ政権の成立

1347年、サキャ派の内部対立により権力が弱体化した結果、チャンチュプ・ギェルツェンがチベットの首領として台頭し、その後1358年には正式にパクモドゥパ政権が成立しました。彼は首都をネドンに置き、チベット中央のウー・ツァンを支配しました。

チャンチュプはチベットの地域を「ゾン」という行政単位に分け、これに対して知事を任命しました。また、従来の十三万戸制度は廃止され、新たにゾンチェンという支配制度が導入されました。彼は法の整備にも取り組み、処刑なども仏教の教えに従った形で行われるようになりました。

1364年にはチャンチュプの甥であるジャムヤン・シャーキャ・ギェルツェンが後を継ぎ、1368年には元の滅亡に伴ってモンゴルの影響力が排除されました。

明朝との関係

1402年、明の永楽帝が即位すると、対外政策に注力しました。彼は1406年にパクモドゥ派の政権を正式に認可し、闡化王の称号を与えました。この時期、明はチベットとの関係を強化し、逆にサキャ派とカギュ派からの支援を要請しました。

パクモドゥパ政権の衰退

パクモドゥパ政権は1420年代から徐々に衰退し、リンプン派の影響が強まります。1444年には僧正位が空位となり、リンプンがネドンの支配権を取ったことで、パクモドゥ派の影響力はほぼ消失しました。

1480年代、ゲルク派とカルマ派の対立が深刻化し、リンプン派の長トンユ・ドルジェによってパクモドゥ派の最後の支配者が追放されました。これにより、チベットにおけるパクモドゥパ政権の時代は幕を下ろし、リンプン派が台頭していくことになります。

このように、パクモドゥパ政権はチベットの歴史の中で重要な役割を果たし、後の政治的及び宗教的な展開に大きな影響を与えました。

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