パク・セウン (バレエダンサー)

パク・セウン：アジア初のパリ・オペラ座エトワール

パク・セウン（朴 世恩、Park Sae Eun）は、1989年12月5日生まれの韓国出身のバレエダンサーです。彼女はパリ・オペラ座バレエ団において、アジア人として初めてエトワールという最高位に任命され、その才能と努力で世界を魅了しています。

バレエとの出会いと研鑽

ソウルで育ったパク・セウンは、幼少期から音楽に親しむ環境にありました。10歳の時、初めてバレエ『くるみ割り人形』を鑑賞し、その華麗な衣装に心を奪われました。その感動がきっかけでバレエを始め、韓国芸術総合学校でクラシック・バレエの基礎を学びました。12歳から本格的にバレエに取り組み始め、当初は韓国で踊ることを考えていましたが、パリ・オペラ座バレエ団で活躍していたキム・ヨンゴルとの出会いが、彼女の視野を大きく広げました。キムからフランス・バレエのメソッドを学び、そのスタイルに魅了されたのです。

15歳で韓国芸術総合学校高等部に進級し、ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップを獲得。17歳でアメリカン・バレエ・シアター（ABT) IIに加入し、アメリカやコスタリカ、スペインなどでツアー公演を経験しました。その後、ABTの芸術監督からソリストとして戻ることを勧められますが、彼女は一度韓国に戻り、韓国国立バレエ団でソリストとして舞台に立ちました。

パリ・オペラ座への挑戦

韓国での活動を経て、パク・セウンは海外で自分の力を試したいという思いを抱き、パリ・オペラ座バレエ団への入団を決意します。当時21歳だった彼女は、外部入団試験に挑戦。マリ＝アニエス・ジロやマチュー・ガニオといった憧れのダンサーたちが在籍するカンパニーで踊りたいという強い思いが、彼女を突き動かしました。2011年、パリ・オペラ座バレエ団に契約団員として入団。当初は代役要員として舞台裏で待機する日々が続きましたが、イザベル・シアラヴォラの踊りを間近で見られるだけでも幸せだと感じ、ひたむきに努力を続けました。

2013年に正式団員となり、同年、カドリーユからコリフェへ昇進。その後も着実にステップアップし、2016年にはプルミエール・ダンスーズに昇進しました。2017-18年のシーズンには、『ジュエルズ』の『ダイヤモンド』を踊り、韓国人として4人目のブノワ賞を受賞。これは彼女にとって大きな転機となりました。

エトワールへの道

2021年6月10日、パク・セウンは『ロミオとジュリエット』でジュリエット役を演じました。当初の予定とは異なり、急遽代役として舞台に立つことになったこの日、彼女は素晴らしいパフォーマンスを披露し、終演後、オーレリー・デュポン（パリ・オペラ座バレエ団舞踊芸術監督）の推薦により、アジア人として初めてエトワールに任命されました。

これは、パリ・オペラ座バレエ団の歴史においても画期的な出来事であり、外国人ダンサーのエトワール任命が困難であった状況を考えると、彼女の才能と努力が認められた証と言えるでしょう。エトワールに任命されたことで、彼女は「自分が踊りたい作品の舞台で踊れること」を最も喜んでいます。今後は、得意な作品ややりたい作品で観客を感動させるような公演を披露したいと抱負を述べています。

レパートリーと評価

パク・セウンのレパートリーは、クラシック・バレエから近現代作品、コンテンポラリーまで幅広く、その卓越した技術と表現力で観客を魅了しています。特に、ジョン・クランコ振付の『オネーギン』は彼女が長年踊りたいと願っていた作品であり、2018年にタチアナ役を演じた際には、その演技力が高く評価されました。

彼女の踊りについて、批評家からは「テクニックは常に堅固であるとともに、繊細、流麗で軽やか」「バレエに対するあふれるような情熱は誰の目にも明らか」といった賛辞が贈られています。

人柄と私生活

パク・セウンは、その物静かで穏やかな人柄でも知られています。同僚からは「サエ」の愛称で親しまれており、同じくアジア系のオニール八菜とは親友です。エトワール任命後も努力を怠らず、1日の練習時間が9時間を超えることもあります。また、自身のルーツである韓国への誇りを持ち、それが成長の原動力になっていると語っています。

2023年1月には女児を出産し、同年6月には産休明けの復帰舞台として『マノン』に出演。パートナーは、彼女がエトワールに任命された際にロミオ役を演じたポール・マルクが予定されています。

パク・セウンのバレエ人生は、まさに努力と才能、そして情熱が織りなす美しい物語です。彼女はこれからも、世界中の観客に感動を与え続けることでしょう。

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