パシフィック・サウスウエスト航空

パシフィック・サウスウエスト航空（PSA）

パシフィック・サウスウエスト航空（Pacific Southwest Airlines, PSA）は、かつてアメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴに本拠地を置いていた航空会社です。1949年に設立され、1987年にUSエアウェイズに吸収合併されるまで、西海岸を中心に運航していました。PSAは、その革新的な経営戦略と親しみやすい社風で、アメリカの航空業界に大きな足跡を残しました。

創設と発展

PSAは、1949年にケニー・フリードキンによって設立されました。当初は、サンディエゴとオークランドを結ぶ週1便の路線からスタートしました。フリードキンは、パイロット養成学校の経営と個人航空会社の失敗を経て、旅行代理店のアドバイスを受け、妻と共に事業を再開。リースしたダグラスDC-3型機で運航を開始しました。初期のチケット販売は、第二次世界大戦中に使われていたトイレを改装した場所で行われていました。

1950年代に入ると、PSAはサンフランシスコへの路線を開設し、事業を拡大。1955年には、キャピタル航空から2機のDC-4型機を購入しました。この際、機体をDC-6型機のように見せるため、窓を黒く塗りつぶすなどのユニークな塗装が施されました。1960年代には、ロッキードL-188エレクトラを導入し、サンディエゴ - サンフランシスコ線に投入。その後、ボーイング727-214とボーイング737-214に機材を更新しました。特にL-188は、後部にラウンジを設けた特別な内装が施されており、カリフォルニア州内の都市を結ぶ路線で活躍しました。L-188は、1975年にハブ空港がサンディエゴ国際空港からレイク・タホ空港に移され、1979年に退役しました。

1978年の航空規制緩和により、PSAは運賃競争に巻き込まれますが、リノ、ラスベガス、ソルトレイクシティ、フェニックス、ツーソンといったカリフォルニア州外の都市にも路線を拡大。主要空港への自動発券機や自動チェックイン機の導入、メキシコのサンルーカスへの国際線開設など、積極的な事業展開を行いました。また、倒産したブラニフ航空を買収しようとしたり、ワシントン州やオレゴン州、アイダホ州にも路線を伸ばしたりしました。西海岸の小都市には、BAe146型機を導入し、機体の愛称を公募によって「Smiliner」と命名しました。

USエアウェイズとの合併

1986年、ウェスタン航空がデルタ航空に、エア・カリフォルニアがアメリカン航空に買収され、航空業界の再編が進みました。USエアウェイズもエア・カリフォルニアの買収を検討していましたが、アメリカン航空に買収されたことで計画は頓挫。その後、PSAが買収対象として選ばれました。アメリカン航空は、カリフォルニア州の航空市場を独占することを避けたため、USエアウェイズによるPSA買収を後押ししたとも考えられています。しかし、アメリカン航空のエア・カリフォルニア買収発表から約1時間後、PSAはUSエアウェイズとの合併に同意しました。

1987年に合併が完了し、1994年までにPSAの全路線がUSエアウェイズに移管されました。PSAは、合併により会社自体が解散し、拠点は東海岸に移転。ハブ空港であったサンディエゴ国際空港はコミューター空港扱いに格下げされました。PSAが目指していた全国的なメジャーキャリアへの進出は、西海岸に路線が限られていたこともあり実現しませんでした。しかし、サンディエゴを中心とした航空網は、後にサウスウエスト航空によって引き継がれています。2005年には、USエアウェイズとアメリカウエスト航空が合併した際、USエアウェイズのA319型機がPSAの塗装に塗り替えられ、PSAが運航していた路線をなぞるように運用されました。この機体は、USエアウェイズがアメリカン航空に合併した後も、PSAの塗装のまま運行されています。

社風

PSAは、そのユーモアセンスで知られていました。スローガンは「最もフレンドリーな航空会社」で、機首に描かれた笑顔のマークや「Catch Our Smile」というキャッチフレーズが、その親しみやすさを象徴していました。また、米海軍の拠点であるサンディエゴをベースにしていたことや、格安運賃から「貧しい水兵の航空会社」とも呼ばれていました。客室乗務員の制服は、明るい色でスカート丈が短いことも特徴的でした。

就航都市

PSAは、カリフォルニア州を中心に、アリゾナ州、ニューメキシコ州、ネバダ州、コロラド州、オレゴン州、ワシントン州、そしてメキシコにも路線を展開していました。カリフォルニア州内では、サンディエゴ、ロサンゼルス、ロングビーチ、バーバンク、サンフランシスコ、サンノゼ、サクラメント、ストックトン、フレズノ、オークランド、モントレー、オレンジ・カウンティー、オンタリオなどに就航。メキシコでは、サンルーカス、マサトラン、プエルト・バリャルタに国際線を運航していました。

保有機材

PSAがUSエアウェイズと合併した際には、以下の機材を保有していました。

BAe 146：27機
ボーイング737-200：12機
マクドネル・ダグラスMD-81：23機
マクドネル・ダグラスMD-82：12機

過去には、以下の機材も運用していました。

ダグラスDC-3
ダグラスDC-4
ダグラスDC-9
ロッキードL-188エレクトラ
ロッキードL-1011トライスター
ボーイング727

事件・事故

PSAは、いくつかの重大な航空事故に見舞われました。

パシフィック・サウスウエスト航空182便墜落事故（1978年）: ボーイング727型機が、サンディエゴ国際空港に着陸態勢に入っていた際、訓練中のセスナ機と衝突。両機はノースパークに墜落し、乗客乗員と地上の住民合わせて144人が死亡しました。
パシフィック・サウスウエスト航空1771便墜落事故（1987年）: BAe 146型機が、元従業員の逆恨みによる犯行で、カリフォルニア州中部の海岸沿いに墜落。乗客乗員43人全員が死亡しました。
パシフィック・サウスウエスト航空902便ハイジャック事件（1972年）: ボーイング727型機がハイジャックされ、乗客は解放されたものの、乗務員がキューバまで連れて行かれました。
パシフィック・サウスウエスト航空710便ハイジャック事件（1972年）: ボーイング737型機がソ連への亡命目的でハイジャックされ、乗客とハイジャック犯3名が死亡しました。

関連項目

かつて存在した航空会社の一覧

外部リンク

US Airways（英語版）

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