パスクァリーノ・デ・サンティス

パスクァリーノ・デ・サンティス：巨匠たちの光と影を捉えた撮影監督

1927年、イタリアのフォンディに生まれたパスクァリーノ・デ・サンティスは、映画史に名を刻む撮影監督として知られています。彼の兄は、同じくイタリア映画界で活躍した著名な映画監督、ジュゼッペ・デ・サンティスです。兄弟揃って映画界に貢献した才能豊かな一族と言えるでしょう。

1965年より本格的に撮影監督としてのキャリアをスタートさせると、たちまちその才能は開花します。彼は、フランチェスコ・ロージ、ルキノ・ヴィスコンティ、ジョゼフ・L・マンキウィッツといった錚々たる監督たちと仕事を共にしました。さらに、フランスを代表する巨匠ロベール・ブレッソンや、イタリア映画の巨匠フェデリコ・フェリーニといった、国境を超えた巨匠たちからも信頼を寄せられ、数々の作品で美しい映像を創造しました。

デ・サンティスがキャリアにおいて最も輝かしい功績として挙げられるのは、1968年に公開されたフランコ・ゼフィレッリ監督の『ロミオとジュリエット』でアカデミー撮影賞を受賞したことでしょう。この作品における彼の繊細にして力強い映像表現は、世界中の観客を魅了し、映画史に燦然と輝く一頁を刻みました。シェイクスピアの不朽の名作を、鮮やかな色彩と情感豊かな光と影の使い分けによって、新たな生命を吹き込んだと言えるでしょう。

その後もデ・サンティスは、精力的に作品を手がけ続けました。ベルナルド・ベルトルッチ監督の『地獄に堕ちた勇者ども』、ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』、そしてロージー監督の作品など、多様なジャンルの映画で彼の卓越した技術が活かされています。その作品群は、単なる映像の記録ではなく、それぞれの映画の世界観を深く理解し、それを視覚的に表現しようとする彼の強い意志を感じさせます。

例えば、ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』では、衰えゆく美と、死の影が忍び寄るヴェネツィアの情緒を、美しくも哀愁漂う映像で描き出しています。また、政治サスペンスから社会派ドラマまで、幅広いジャンルの作品で、それぞれの主題を効果的に表現する映像を作り上げています。彼の作品は、監督の意図を的確に捉え、それを超える独自の表現を加えることで、作品に深みと奥行きを与えていると言えるでしょう。

彼の代表作を以下に挙げます。

『ロミオとジュリエット』(1968)
『地獄に堕ちた勇者ども』(1969)
『ベニスに死す』(1971)
『黒い砂漠』(1972)
『暗殺者のメロディ』(1972)
『コーザ・ノストラ』(1973)
『家族の肖像』(1974)
『ローマに散る』(1976)
『イノセント』(1976)
『特別な一日』(1977)
『エボリ』(1979)
『ラルジャン』(1983)
『カルメン』(1984)
『ウィンター・ローズ』(1984)
『予告された殺人の記録』(1987)
『パレルモ』(1990)
『湖畔のひと月』(1995)
『遙かなる帰郷』(1997)

1996年、69歳でこの世を去ったパスクァリーノ・デ・サンティス。彼の残した作品は、今もなお世界中の映画ファンを魅了し続けています。巨匠たちの作品に彩りを添え、映画史に不滅の足跡を残した彼の功績は、これからも高く評価され続けることでしょう。

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