パトリシア・ニール

パトリシア・ニール: 女優の軌跡

パトリシア・ニール（本名：Patsy Louise Neal）は、アメリカの舞台と映画で名を馳せた女優であり、1926年1月20日にケンタッキー州で生まれました。彼女はテネシー州ノックスビルで育ち、ノックスビル高校を卒業後、ノースウェスタン大学でスピーチと演技を学びました。彼女のキャリアはブロードウェイからスタートし、1947年には舞台『Another Part of the Forest』でトニー賞を受賞しました。これにより、彼女の名声は広がり、舞台から映画界へと足を踏み入れることとなります。

彼女は1948年に映画デビューを果たし、1949年には『摩天楼』に出演しました。この作品で共演したゲイリー・クーパーとの間には、2年前から秘められた不倫の関係がありました。この恋愛が公に知られることとなると、彼女はマスコミから厳しい批判を浴び、また子供を妊娠したものの、クーパーの妻がカトリック教徒であるために離婚ができず、断腸の思いで中絶を選ぶことになります。この出来事は彼女の心に深い傷を残し、その後のキャリアにも影響を与えました。

1953年に劇作家リリアン・ヘルマンの紹介で出会った著名な作家ロアルド・ダールと結婚し、二人の生活は新たな転機を迎えます。ダールとの間に5人の子供をもうけた彼女は、1957年に『群衆の中の一つの顔』でハリウッドに復帰し、キャリアを再スタートさせました。1962年にはポール・ニューマンと共演した『ハッド』でアカデミー主演女優賞を受賞し、特に記者会見でクーパーから贈られた毛皮のコートを着て登場したことが話題となりました。彼女はクーパーとの関係を心に抱き続け、彼の死後「彼は私の愛です」と語りました。

しかし、彼女の人生は喜びと悲しみに満ちていました。1960年、長男テオが交通事故で脳に障害を負い、1962年には7歳の長女オリヴィアを麻疹脳炎で失いました。さらに1965年にはルーシーを妊娠中に脳卒中に見舞われ、一時は言葉を失うなど厳しいリハビリ生活を余儀なくされます。幸運にも、固い意志のもとで回復し無事に出産を果たします。その後、彼女は『卒業』でのミセス・ロビンソン役のオファーを断ったものの、1968年の作品『The Subject Was Roses』で再びアカデミー賞にノミネートされ、その実力を証明しました。

しかし、彼女の生活は夫ダールの度重なる浮気に悩まされ、30年の結婚生活を経て1983年に離婚することになりました。2010年、肺癌により彼女はこの世を去りましたが、そのキャリアと私生活には多くの人々に影響を与えました。日本では1990年に彼女の自伝『真実 パトリシア・ニール自伝』が刊行されています。この自伝には「自分の愛した男性はゲイリー・クーパーただ一人だった」との言葉が綴られており、彼女の人生と愛情の深さが窺えます。

彼女の次女で作家のテッサ・ダールの娘であるソフィー・ダールも、女優として活動しており、4世代にわたる芸術家の家系を形成しています。パトリシア・ニールは、単なる女優としてだけでなく、数々の困難を乗り越えた女性として、多くの人々に語り継がれています。

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