パハルプールの仏教寺院遺跡群

パハルプールの仏教寺院遺跡群

バングラデシュのラジシャヒ管区ナウガウン県に位置するパハルプールの仏教寺院遺跡群は、8世紀半ばから9世紀にかけて建設された大乗仏教の精舎の跡です。ここに存在するソーマプラ僧院は、当時の仏教の中心地とされており、その名前には「山の中核」という意味が込められています。

この地域はかつてパーラ王朝の影響下にあり、その支配のもとで仏教が非常に栄えました。多くの仏教寺院が建設され、その中でもパハルプールは特に重要な施設として知られています。同時代には、著名な施設であるヴィクラマシーラ僧院やナーランダ僧院も存在していました。

建築様式の特徴

パハルプールの寺院遺跡は、かつて尖塔が立っていたことが推測されていますが、現在はレンガで造られた基礎や周辺の壁が残るのみです。かつての施設は非常に大規模で、一辺が330メートルの敷地内には177の僧院や72の台座、仏舎利塔が存在し、1,000人を超える僧侶たちが収容されていました。このような施設配置は、インド仏教の末期に見られる典型的なスタイルであり、当時の仏教の中心的存在であったことを示しています。

各僧院は中庭へとつながる設計がなされており、この時代にはすでに下水道のような基盤が整備されていたと考えられています。また、寺院の壁面には約2,800枚の素焼きの塑像が設置されており、そこには仏陀やヒンドゥー教の神々、人や動物など多様なテーマが描かれています。このため、パハルプールは地域の仏教文化における重要な拠点として栄え、17世紀まで多くの巡礼者を魅了しました。さらに、この建築スタイルはビルマのパガン遺跡やカンボジアのアンコール遺跡へも多大な影響を与えたと言われています。

現状と保存の取り組み

遺跡の頂上からは見晴らしが良く、広大な敷地全体を見渡せるですが、近年は遺跡の破壊が進行しているため、登ることが禁止されています。これにより遺跡の保存状態への懸念が高まっています。敷地内には、パハルプールを紹介する博物館も設立されており、その重要性を広く知らせる役割を果たしています。

世界遺産としての意義

パハルプールの仏教寺院遺跡群は、世界遺産として認定されており、以下の基準を満たしています。

• - (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
• - (2) ある文化圏において建築や技術、芸術などの発展に関する重要な交流を示す。
• - (6) 顕著で普遍的な意義を持つイベントや思想、信仰と直接的に関連する。

これによりパハルプールは、仏教の歴史や文化を知る上で欠かせない存在であり、訪れる人々に深い感銘を与える場所といえるでしょう。

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