パラグアイ戦争

パラグアイ戦争：南米大陸を揺るがした大戦

パラグアイ戦争（1864年 - 1870年）は、パラグアイとアルゼンチン、ブラジル帝国、ウルグアイの三国同盟との間で戦われた、南米の歴史上最も悲惨な武力紛争の一つです。三国同盟戦争、対三国同盟戦争、ロペス戦争とも呼ばれます。

戦争の背景

19世紀初頭、南米諸国は独立後も領土紛争に苦しんでいました。ブラジル帝国とスペイン系アメリカ諸国間では国境をめぐる争いが絶えず、領有権の主張が重複していました。これらの問題は植民地時代から引き継がれたもので、解決は困難を極めました。

トルデシリャス条約とマドリード条約

1494年にポルトガルとスペインが締結したトルデシリャス条約は、南米を含む世界の植民地分割の基礎となりましたが、数世紀を経てその効力を失いました。18世紀には、より現実的な境界線を定める必要が生じ、1750年のマドリード条約によって、南米におけるポルトガルとスペインの領土がおおむね現在の形に分けられました。

ラテンアメリカ独立後の紛争

1810年代のラテンアメリカ独立に伴い、リオ・デ・ラ・プラタ副王領が崩壊し、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイなどの新国家が誕生しました。これらの国々は、人口が少なく、先住民族が居住する奥地の領土をめぐって争いました。パラグアイは、ブラジルとの国境線をアパ川とブランコ川のどちらにするかで対立していました。

戦争前の関係国の事情

パラグアイ

パラグアイは1811年に独立し、フランシア博士の独裁下で独自の発展を遂げました。カルロス・アントニオ・ロペス大統領の時代には、南米初の義務教育の導入、鉄道の導入、工業化など、ラテンアメリカで最も近代的な国家となりました。軍事力も増強し、南米最強の軍隊を保有するに至りました。

ウルグアイ

ウルグアイは、シスプラティーナ戦争後、アルゼンチンとブラジルの緩衝国として独立しました。しかし、コロラド党とブランコ党の対立が激化し、大国がそれぞれを支援する内戦状態に陥りました。

アルゼンチン

アルゼンチンは、ロサス失脚後、ブエノスアイレス州とアルゼンチン連合の主導権争いで分裂していました。バルトロメ・ミトレが大統領に就任し、国土統一を達成すると、西欧化を推し進めました。

ブラジル

ブラジルは、ペドロ2世の即位後、国内の反乱を鎮圧し、ラプラタ川地域への進出を目論んでいました。特にパラグアイとウルグアイに対する圧力を強めました。

ウルグアイ戦争

1864年、ブラジルはウルグアイ内政に介入し、コロラド党を支援しました。パラグアイのソラノ・ロペス大統領は、ウルグアイへの不干渉を求めましたが、ブラジルはこれを無視しました。これに対し、ロペスはブラジル商船を拿捕し、ブラジルに宣戦布告しました。

開戦とロペスの誤算

1864年11月、パラグアイ軍はブラジルのマットグロッソ州に侵攻し、要衝を占領しました。ロペスはアルゼンチンのミトレ大統領に領土通行権を求めましたが、拒否されました。1865年3月にはアルゼンチンにも侵攻しましたが、ウルキーサの決起も得られませんでした。

三国同盟の結成

1865年4月、ウルグアイでコロラド党が政権を握り、パラグアイに宣戦布告しました。同年5月1日、アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイの三国同盟が結成され、ロペスの構想は崩れました。

戦争のパラグアイ化

1866年、三国同盟軍がパラグアイ国内へ侵攻を開始しました。パラグアイ軍は必死に抵抗しましたが、兵力不足により敗北が続き、1869年1月に首都アスンシオンが占領されました。ロペスは市民と共に首都を脱出し、1870年3月1日に戦死し、戦争は終結しました。

戦争の結果

パラグアイは完敗し、国土は四分の三に縮小し、人口も激減しました。南米におけるプロイセンのような立場だったパラグアイの挑戦は失敗に終わり、イギリスの経済的覇権下に組み込まれることになりました。ブラジルとアルゼンチンも、多大な戦費によりイギリスへの従属を深めました。

パラグアイ戦争を題材とした作品

* 映画「セロ・コラー」（1978年）

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