リオ・デ・ラ・プラタ副王領

リオ・デ・ラ・プラタ副王領

リオ・デ・ラ・プラタ副王領（スペイン語: Virreinato del Río de la Plata）は、1776年にスペインによって設立された、南アメリカにおける4つ目の、そして最後の副王領です。この副王領は、現在のアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビアといった地域を包含し、それまでペルー副王領が管轄していた広大な領域を引き継ぎました。

設立の背景

カルロス3世がリオ・デ・ラ・プラタ副王領を設立した背景には、いくつかの要因がありました。

イスパノアメリカ支配の分散化: 広大な領土をペルー副王領のみで統治することの限界から、より効率的な統治体制を確立する必要がありました。
ポルトガルの侵攻への備え: ブラジル南部との国境地帯であるラプラタ川北岸における、ポルトガルからの侵略に対する防衛体制を強化することが急務でした。
密輸の取り締まり: ポルトガル領ブラジルとブエノスアイレス間の密輸を阻止し、スペイン本国への税収を確保する必要がありました。
南大西洋地域の軍備: イギリスがマルビナス諸島を占領する意図を示し始めたため、南大西洋地域の軍備を増強する必要がありました。

副王領の繁栄と変容

初代副王ペドロ・デ・セバリョスは、ポルトガル軍を退け、ブエノスアイレスに新たな政府を組織しました。18世紀を通じて、ブエノスアイレスはスペイン帝国の交易都市として急速に発展しました。ポトシ銀山の銀がブエノスアイレスを経由して輸出されるようになり、ヨーロッパの産業革命による皮革需要の増加、カリブ海地域の砂糖プランテーションにおける奴隷やイギリスの船員向けの塩漬け肉の需要が、パンパス地域の畜産業を大きく発展させました。1780年代には、1000万頭分の皮革がブエノスアイレスから輸出されたと記録されています。

しかし、ブエノスアイレスを副王領の首都とし、特権的な通商権を与えたことは、パラグアイやバンダ・オリエンタル（現在のウルグアイ）の不満を高めることにもなりました。

副王領の終焉

1804年に副王に就任したラファエル・デ・ソブレモンテは、イギリスの侵略から逃れるという失態を演じました。一方、ブエノスアイレスのクリオーリョ（植民地生まれのスペイン系住民）たちは、イギリスの侵略を自力で撃退し、自治と自衛の意識を高めました。1810年、クリオーリョたちは自治政府（フンタ）を樹立し、リオ・デ・ラ・プラタ副王領は終焉を迎え、独立運動が開始されました（五月革命）。

リオ・デ・ラ・プラタ副王領は短命な植民地でしたが、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビアといった今日の南米諸国の形成に大きな影響を与えました。また、ブエノスアイレスの経済的・政治的地位を確立し、その後のアルゼンチンの歴史を方向付けることになりました。

参考文献

大貫良夫、落合一泰、国本伊代、恒川恵市、福嶋正徳、松下洋『ラテン・アメリカを知る事典』平凡社、1987年。ISBN 4582126251。
高橋均、網野徹哉『ラテンアメリカ文明の興亡(世界の歴史18)』中央公論社、1997年。ISBN 4124034180。

関連項目

* リオ・デ・ラ・プラタ諸州連合（ラ・プラタ連合州）

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