パラッツォ・ファルネーゼ (カプラローラ)

パラッツォ・ファルネーゼは、イタリアのラツィオ州カプラローラに建つ、五角形の平面を持つ後期ルネサンス様式の壮麗なパラッツォです。ヴィラ・ファルネーゼとも呼ばれますが、本稿ではパラッツォ・ファルネーゼで統一します。

歴史

元々この地には、後にローマ教皇パウルス3世となるアレッサンドロ・ファルネーゼが枢機卿時代に、五角形の1階建ての建築物を建てていました。その後、同名の孫アレッサンドロ・ファルネーゼの依頼により、1559年から建築家ジャコモ・バロッツィ・ダ・ヴィニョーラによって現在の姿への改築が開始されました。ヴィニョーラは1573年に亡くなりますが、その時点で建設はほぼ完了しており、彼の代表作の一つとされています。

1580年から1581年にかけてフランスの外交使節としてイタリアを巡ったミシェル・ド・モンテーニュは、パラッツォ・ファルネーゼを訪れ、著書『旅日記』で「イタリアで名高い」と絶賛し、「これに比べるものを見なかった」と記しています。また、1746年にはフランスの画家クロード・ジョセフ・ヴェルネが、スペイン王妃エリザベッタ・ファルネーゼのために『カプラローラのヴィッラの眺め』を描きました。

ファルネーゼ家が1731年に断絶した後、パラッツォはブルボン家が引き継ぎ、1973年からはイタリア政府が管理しています。現在では地下に博物館が併設され、一般公開されています。

立地

パラッツォ・ファルネーゼは、カプラローラのメインストリートの突き当たりに位置しており、パラッツォが主役となるよう計算された区画整備の結果です。パラッツォの先には広大な庭園が広がり、五角形の正面と反対側の2辺からアクセスできます。庭園の先には、町を囲む丘陵地帯が控え、借景のような効果を生み出しています。

建築

モンテーニュの『旅日記』にあるように、「見た目には真四角」に見えるこの建物ですが、実際には五角形です。メインストリートの突き当たりにある左右に分かれたスロープを上ると、建物の正面に到着します。玄関レベルに到達するには、左右に配置された折り返し階段を長く登る必要があり、その先の段差と跳ね橋を越えると、ようやく玄関にたどり着くという、非常に凝ったアプローチが特徴的です。

玄関を入るとホールがあり、左右に円形の小部屋、正面には円形の中庭が配置されています。左側の部屋は螺旋階段のある階段室で、反対側の円形の部屋は礼拝堂です。奥には複数の四角い部屋があり、これらの部屋は絵画や彫刻で彩られています。装飾にはタッデオ・ツッカロをはじめとする多くの芸術家が参加しました。

中庭はポルティコを備えた円形で、3層構造になっています。1階部分は家来の部屋や来賓をもてなすための空間、上層は枢機卿のための空間として使用されていました。地下は現在博物館として利用されています。

建築家フィッシャー・フォン・エルラッハは、パラッツォ・ファルネーゼを「要塞と娯楽の城の特質を兼ね備えた最も壮大な城の実例」と評価し、自身の設計に影響を与えたと述べています。

パラッツォ・ファルネーゼは、その独特な構造と歴史的価値から、多くの人々を魅了し続けています。芸術と建築を愛する人々にとって、訪れる価値のある場所と言えるでしょう。

もう一度検索