ジャコモ・バロッツィ・ダ・ヴィニョーラ

ジャコモ・バロッツィ・ダ・ヴィニョーラ（Giacomo Barozzi da Vignola, 1507年10月1日 - 1573年7月7日）は、16世紀のマニエリスムを代表するイタリアの建築家であり、「ヴィニョーラ」の名で広く知られています。彼の建築作品は、イタリア・ルネサンス様式を西ヨーロッパに広める上で重要な役割を果たしました。特に、カプラローラのパラッツォ・ファルネーゼとローマのジェズ教会は、彼の最高傑作として知られています。ヴィニョーラは、セバスティアーノ・セルリオ、アンドレーア・パッラーディオと並び、イタリア・ルネサンス様式をヨーロッパに広めた3人の建築家の一人として数えられています。

生涯

ヴィニョーラは、モデナ近郊のヴィニョーラで生まれました。1520年頃、ボローニャに移住し、建築家としてのキャリアをスタートさせました。彼は建築の傍ら、絵画や象嵌細工のパターンも手掛けていました。1536年に初めてローマを訪れ、古代ローマの神殿の図面を描き、ウィトルウィウスの著書の図版作成に取り組みました。その後、フランス王フランソワ1世に招かれ、1541年から1543年までフォンテーヌブローで過ごしました。この地で、同じボローニャ出身の建築家セルリオや画家フランチェスコ・プリマティッチオと出会ったと考えられています。

イタリアに戻ると、ヴィニョーラはボローニャでパラッツォ・ボッチを設計しました。1550年にはローマに移住し、教皇ユリウス3世に仕え、ヴィラ・ジュリアなどの建設に携わりました。1555年に教皇が亡くなると、アレッサンドロ・ファルネーゼ枢機卿とパルマ公オッターヴィオ・ファルネーゼ兄弟に仕え、パルマやピアチェンツァでパルマ公宮殿、カプラローラではパラッツォ・ファルネーゼを設計しました。ローマでは、イエズス会のジェズ教会の設計を手がけましたが、彼の死後、ジャコモ・デッラ・ポルタがその設計を引き継ぎました。ヴィニョーラはミケランジェロとも親交があり、その影響を大きく受けています。

1564年にミケランジェロが亡くなると、ヴィニョーラはサン・ピエトロ大聖堂の工事を引き継ぎ、ミケランジェロの設計に基づいて2つの小さなドームなどを建設しました。1573年にヴィニョーラは亡くなり、1973年には遺骨がパンテオンに移されました。彼の妻や子については詳しい記録が残っていませんが、子孫はRozziという姓でアメリカに住んでいるとされています。

作品

ヴィニョーラの代表的な作品は以下の通りです。

ヴィラ・ジュリア (ローマ、1550年-1553年)：教皇ユリウス3世の別荘として建てられました。ミケランジェロや教皇の指導の下、アンマナーティも設計に参加し、庭園はヴァザーリが担当しました。
パラッツォ・ファルネーゼ (カプラローラ、1559年-1573年)：ファルネーゼ家の壮大な邸宅で、ヴィニョーラの代表作の一つです。
ヴィラ・ランテ (ヴィテルボ近郊、1566年-)：庭園や噴水を含む、美しい庭園建築です。
ジェズ教会 (ローマ)：イエズス会の教会で、17世紀バロック様式の教会のファサードに影響を与えました。
サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ大聖堂 (アッシジ)：ガレアッツォ・アレッシと共同で設計しました。
サン・タンドレア教会 (ローマ)：世界初の楕円形ドームを持つ教会であり、バロック建築の特徴となりました。

ヴィニョーラは、他の多くの建築家と同様に、サン・ペトロニオ聖堂のファサードの設計にも応募しています。彼の設計は、バルダッサーレ・ペルッツィ、ジュリオ・ロマーノ、アンドレーア・パッラーディオの設計と共に、2001年の展覧会で公開されました。

建築理論

ヴィニョーラは、古典建築様式の規則を定式化した2つの重要な建築書を出版しました。1562年に出版された『建築の5つのオーダー』では、トスカナ式、ドリス式、イオニア式、コリント式、コンポジット式の5つのオーダーについて、自身がローマの古代建築物を計測した結果に基づいて体系的に解説しています。この書は、明快で実用的な内容から、後世において最も広く出版された建築史書の一つとなりました。死後の1583年に出版された『実用的遠近法の2つの規則』では、2点透視よりも1点透視を推奨しています。

ヴィニョーラの建築理論は、後世の建築家に大きな影響を与え、バロック建築の発展にも寄与しました。彼の作品と著書は、今日でも建築を学ぶ上で重要な資料となっています。

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