パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション

パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション（PTC）について

パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション（Parametric Technology Corporation）、通称PTCは、CAD（コンピュータ支援設計）、CAM（コンピュータ支援製造）、CAE（コンピュータ支援エンジニアリング）、およびPLM（製品ライフサイクル管理）関連のソフトウェアとサービスを提供するアメリカのソフトウェア企業です。

フランスのダッソー・システムズ、ドイツのシーメンスPLMソフトウェアと並び、世界の3大PLMベンダーとして広く認知されています。主力製品は、機械設計用3次元CADのPTC Creo Parametricと、PLM製品のWindchillで、主に製造業（重工業、電子・ハイテク、航空宇宙・防衛、自動車、消費財、医療産業など）を中心に、世界50,000社以上の企業を顧客基盤としています。

PTCの歴史

PTCの歴史は、ロシア出身の数学者サミュエル・ゲイスバーグ博士に始まります。ソ連で数学博士であったゲイスバーグ博士は、1974年にアメリカに亡命。1980年代前半まで、Applicon社やComputervision社でCAD/CAMソフトウェアの開発に従事していました。1985年5月、ゲイスバーグ博士は自身のアイデアに基づき、革新的な3次元CAD/CAMの開発を目指してPTCを設立しました。

設立から数年間は、ベンチャーキャピタルから400万ドルの資金援助を受け、3次元CADソフトウェア「Pro/ENGINEER」の開発に専念しました。1988年には、世界初のパラメトリック・フィーチャーベースの3次元CADであるPro/ENGINEERをリリース。この技術は、設計変更がモデル全体に瞬時に反映されるという画期的なもので、当時のCAD/CAM業界に大きな変革をもたらしました。

Pro/ENGINEERは市場に投入されるやいなや急速に受け入れられ、その年の売上は300万ドルを達成しました。最初の顧客は建設機械メーカーのJohn Deereだったと言われています。翌1989年には売上を1,100万ドルまで伸ばし、150万ドル以上の利益を上げました。PTCは1989年にNASDAQ市場で株式公開を果たし、増資によって得た資金をPro/ENGINEERを様々なOSに移植するための開発費用に充当しました。1990年代初頭にかけて急速な成長を遂げ、1993年頃にはCAD/CAM市場全体の20%のシェアを獲得するに至りました。

PTCの急速な成長には、強力な販売力も大きく貢献しました。特に、営業組織を率いたスティーブ・ウォルスキーは、後にCEOに就任し、その販売手法は業界に広く知られることとなりました。ウォルスキーはPTC設立初期にベンチャーキャピタルによってゲイスバーグ博士に紹介された人物で、内向的な性格で技術開発に専念したいゲイスバーグ博士との相性は抜群でした。

ウォルスキー率いる営業組織は、ディック・ハリソンと共に、顧客への積極的な売り込みを行いました。ウォルスキーが営業組織に徹底させた販売スタイルは自信と熱意に満ち溢れていましたが、時には威圧的な姿勢と受け取られることもありました。しかし、ウォルスキーとハリソンは、IBM、Computervision、EDSといった大企業との競争に打ち勝つためには必要な戦略だと考えていました。

1990年代初頭には、ゲイスバーグ博士は徐々にビジネスの表舞台から退き、他の幹部が実権を握るようになりました。後にゲイスバーグ博士は幹部職を退き、自身の財団に時間を費やすようになりました。その後、ウォルスキーがCEOに、ハリソンがCOO兼プレジデントに就任。ウォルスキーは2000年までCEOを務め、ハリソンにその座を譲りました。ハリソンは2010年10月に、現在のCEOであるジム・ヘプルマンにCEOの座を引き継いでいます。

PTCは1998年にComputervision社を買収し、同社の子会社であったWindchill Technologiesを傘下に迎え入れました。当時、Windchill Technologiesは、ジム・ヘプルマンによって設立され、PLM製品を開発していた企業です。

主要な製品群

PTCの製品は、以下の5つの主要な製品群で構成されており、これらを総称して「製品開発システム（Product Development System：PDS）」と呼んでいます。

1. Creo：統合CAD/CAM/CAE環境
ヒストリーベースのPTC Creo Parametric（旧Pro/ENGINEER）
ノンヒストリーベースの旧CoCreate社の3次元CAD（OneSpace Designer Modeling）
CoCreate社の2次元CAD（OneSpace Designer Drafting）
ProductView（ビューア）
Illustrate（旧ITEDO社のテクニカルイラスト作図ツール）

2. Windchill：製品ライフサイクル全般の管理
PDMとプロセス管理（CADデータ管理、ドキュメント管理、製品構成管理、変更管理、プロジェクト管理、要件管理など）
品質管理（信頼性分析、是正処置/予防処置（CAPA）など。旧NetRegulus社や旧Relex社の技術・製品がベース）

3. Integrity：ソフトウェア要件管理／変更・構成管理／テスト管理／実装管理など、アプリケーション・ライフサイクル管理（旧MKS社のALM製品がベース）

4. Arbortext：XMLエディタ、パブリッシング、コンテンツ管理

5. Mathcad：技術計算、科学計算（旧Mathsoft社の製品がベース）

PTCが買収した主な企業

PTCは、事業拡大のために多くの企業を買収してきました。以下は主な買収事例です。

1995年：エバンス・アンド・サザランド社のConceptual Design and Rendering System（CDRS）製品を買収、Rasnaを買収（Pro/Mechanica）
1998年：Computervisionを買収（CADDS、Optegra、Medusa製品）、Windchill Technologyを買収、InPartを買収
1999年：DIVISIONを買収（Graphic Server、ProductView製品）、Auxiliumを買収（InfoEngine製品）
2000年：Nitidusを買収
2004年：Ohio Design Automationを買収（ECADビューア）
2005年：Aptavis Technology Corp.を買収、Arbortextを買収、Polyplan Technologiesを買収
2006年：ITEDOを買収、Mathsoftを買収
2007年：CoCreateを買収、LBS, Ltd.を買収、NC Graphicsを買収、NetRegulusを買収
2008年：Synapsis Technologyを買収
2009年：Relex Softwareを買収
2010年：Planet Metricsを買収
2011年：MKSを買収（ALM製品）
2012年：4CSを買収、Servigisticsの買収を発表

日本法人

PTCは1992年3月に日本法人（日本パラメトリックテクノロジー株式会社）を設立しました。日本法人設立前は、CTC（現在の伊藤忠テクノソリューションズ）がPro/ENGINEERの販売代理店として国内販売を担っていました。日本法人設立後は直接販売体制に切り替え、PTCの営業担当者やセールスエンジニアが直接販売とサポートを行うようになりました。

当時、日本の製造業では設計の主流は2次元図面であり、3次元CADはまだ普及していませんでしたが、ヒストリーベースで設計変更に強いPro/ENGINEERは日本国内でも急速にシェアを伸ばしました。当時のPTCの販売スタイルは、大企業の経営層にPro/ENGINEERによる高速な設計変更のデモを見せ、3次元CAD導入を軸としたプロセス改革の必要性と効果を訴えるものでした。現場レベルではヒストリーを持たない別の3次元CADを支持する勢力もあり、PTCのトップセールススタイルを好まない現場からは批判されることもありました。2002年11月には、PTCジャパン株式会社へと社名を変更しました。

現在、日本国内には5つの事業拠点があります。

歴代の日本法人/アジア太平洋地域のトップ

以下は、PTC日本法人およびアジア太平洋地域の歴代トップです。

宮下繚、SVP（1992年 - 1997年11月）
ブライアン・ハリガン（Brian Halligan）
ジム・ベッダ（Jim Vedda）、SVP（1998年）
グラント・ウィルソン（Grant Wilson）、VP（1998年）
クリス・ライシック（Chris Reisig）、SVP（1998年10月 - 1999年9月）
トレント・ブラウン、SVP（1999年 - 2000年）
ロブ・チャップデレイン（Rob Chapdelaine）、Sr、DVP、Asia Pacific:（1999年10月 - 2001年10月）
ダグラス T. 新里、SVP（2001年 - 2002年）
ウェイン・バーコヴィッツ（Wayne Berkowitz）、DVP、Asia Pacific:（2003年 - 2005年9月）
ブルーノ・デラエ（Bruno Delahay）、SVP:（2004年6月 - 2006年6月）
マイク・ブラウン（Mike Brown）、DVP、Asia Pacific、（2005年10月 - 2009年9月）
井上公夫:（2006年9月 - 2009年5月）
桑原宏昭:（2009年11月 - ）

外部リンク

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日本PTC/USER会

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