パリ約定

パリ約定についての詳細

パリ約定（パリやくじょう）は、1864年6月20日に江戸幕府の遣仏使節によって締結された国際的な合意のことを指します。この約定の成立は、幕府とフランス政府との間の重要な外交の一環でしたが、最終的には江戸幕府が批准を拒否したため、無効化されました。このような歴史的経緯を考察することは、当時の日本の国際関係や外交政策を理解する手助けとなります。

約定締結の背景

文久3年（1863年）、日本では攘夷（外国排斥）の運動が高まり、反外派によるフランス軍人の殺害事件が発生するなど、外国との緊張が高まっていました。このため、江戸幕府は外国側に対して横浜港を鎖港にするように壁を儲ける方針を発表しましたが、諸外国からは拒否される状況が続きました。そこで、幕府は対外圧力を受ける中、運命を賭けた遣仏使節を結成し、交渉に臨みました。

遣仏使節団は、1863年11月に結成され、正使には外国奉行の池田筑後守長発、副使には河津伊豆守祐邦が就任しました。使節団は総勢34名で構成され、1863年12月29日に横浜港を出発しました。パリまでの旅は上海やスエズ、マルセイユを経て1864年3月13日に到着。

交渉の過程

パリでの交渉の相手は、ナポレオン3世政権下の外務大臣エドゥアール・ドルアン・ド・リュイスでした。交渉では、横浜鎖港の開放を求める一方で、フランス側からは下関戦争の賠償請求や複数の港の自由化を求められました。これに対し、使節団は開港の必要性を感じ、パリ約定に至ることとなります。

約定の調印後、遣仏使節は当初予定していたイギリス訪問を取り止め、1864年7月に帰国しました。帰国後、池田は幕府に対して対外和親政策を提案しましたが、使節団が鎖港政策の使命を全うできなかったため、幕閣は厳しい処分を行いました。池田は半知召上げと蟄居、河津も免職・蟄居という結果となり、約定は幕府の命令で破棄されました。

約定の具体的内容

池田らがフランスとの間で結んだパリ約定にはいくつかの主要な内容が含まれていました：

• - 長州藩によるフランス船への砲撃に対する賠償金として、幕府が10万ドル、長州藩が4万ドルを支払うこと。
• - フランス船の下関海峡における自由航行の保障。
• - 輸入品に対する関税の低減、一部品目は無税とすること。

しかしながら、江戸幕府はこの約定を批准せず、7月24日に約定の破棄を英国、米国、フランス、オランダに通告しました。これにより、パリ約定は実質的に功を成すことなく終了します。

参考文献

• - 『長崎奉行 江戸幕府の耳と目』 外山幹夫著 中公新書 ISBN 4-12-100905-3
• - 『国史大辞典』1巻 吉川弘文館 ISBN 978-4-642-00501-2
• - 『新版 日本外交史辞典』 外務省外交史料館 山川出版社
• - 『日本国際交流史事典』 日本アソシエーツ

このような国際的な交渉とその結果は、江戸幕府における外交政策の一端を示すものであり、その後の日本の近代化に向けた歩みを理解するための重要な歴史的事象と言えるでしょう。

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