パルワーンの戦い

パルワーンの戦い：モンゴル西征における唯一の敗北

1221年、現在のアフガニスタン、カーブル近郊のパルワーンにおいて、モンゴル帝国軍とホラズム・シャー朝軍が激突しました。このパルワーンの戦いは、チンギス・カンによる西アジアへの大規模な軍事遠征において、モンゴル軍が喫した唯一の敗北として歴史に刻まれています。アイン・ジャールートの戦い以前に、西アジアでモンゴル軍が敗北を経験した唯一の事例であり、その衝撃は計り知れませんでした。

1219年に始まったチンギス・カンの西征は、ホラズム・シャー朝の圧倒的な敗北へと繋がりました。ホラズム朝軍はモンゴル軍の猛攻の前に次々と壊滅し、アラーウッディーン・ムハンマド国王は首都サマルカンドから逃亡。ホラズム・シャー朝は事実上崩壊の危機に瀕していました。ムハンマド国王がカスピ海沿岸の小島で亡くなると、ジャラールッディーンが後を継ぎ、スルターンとなりました。

ジャラールッディーンは、劣勢ながらもモンゴル軍への反撃を試みました。約3万の兵を集結させ、モンゴル軍の動向を注視していました。一方、モンゴル軍はシギ・クトクを指揮官としてカーブル近郊に布陣し、ジャラールッディーンの動向を監視していました。しかし、モンゴル軍の一隊がパルワーンでジャラールッディーン軍と遭遇し、戦闘が勃発しました。

シギ・クトクは優れた軍略家というよりは、むしろ文官的な能力に長けた人物でした。彼は偽装工作などの策を講じましたが、ジャラールッディーン軍の攻撃の前に敗北を喫しました。この敗戦はモンゴル軍にとって大きな衝撃を与えました。モンゴル軍は、純粋なモンゴル兵だけでなく多様な民族の兵士で構成されており、通常は自軍の損害を最小限に抑える戦術を重視していました。そのため、パルワーンでの大敗は、モンゴルの軍事戦略に大きな疑問符を投げかける結果となりました。しかし、シギ・クトクがチンギス・カンの生母ホエルンの養子であったことなどもあって、処罰はチンギス・カンからの叱責に留まりました。

ジャラールッディーンもまた、勝利の余韻を楽しむ暇はありませんでした。戦利品である馬の分配をめぐって軍内部で争いが勃発し、せっかくの勝利を有効に活用することができませんでした。さらに、パルワーンでの敗戦の報を受けたチンギス・カンは本隊を率いて南下し、ジャラールッディーン軍は各地で敗退を繰り返しました。最終的に、ジャラールッディーンはインド方面へと逃亡することになります。

パルワーンの戦いは、モンゴル帝国の圧倒的な軍事力をもってしても、油断や内部の不和が敗北を招く可能性を示した重要な事例です。また、この戦いはホラズム・シャー朝の終焉と、モンゴル帝国による西アジア支配拡大のプロセスにおいて、大きな転換点となりました。この戦いを理解することは、13世紀の世界史を理解する上で不可欠です。

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