パレ (ボスニア・ヘルツェゴビナ)

パレ：ボスニア・ヘルツェゴビナ、スルプスカ共和国の町

パレは、ボスニア・ヘルツェゴビナを構成するスルプスカ共和国に属する町であり、基礎自治体の中心地です。首都サラエヴォの南東に位置し、イストチノ・サラエヴォを構成する6つの自治体の1つとなっています。

呼称と地理

パレは、スルプスカ共和国のセルビア人から「スルプスコ・サラエヴォ（セルビア人のサラエヴォ）」と呼ばれることがあります。これは、紛争後にサラエヴォの一部がボスニア・ヘルツェゴビナ連邦の領域となったものの、サラエヴォを離れたセルビア人の関心がいぜん高いことに由来します。しかし、実際にはサラエヴォとパレは地理的に隔たっており、独立した都市としての性格が強く、独自の郵便局や大学を有しています。

歴史

中世

パレは、東西のサラエヴォ渓谷とドリナ川流域が接する場所として、古くから重要な位置を占めていました。ローマ時代に建設された街道の跡が残り、14世紀後半から15世紀初期にはパヴロヴィッチ家の封土に属し、いくつかの要塞化された集落が築かれました。パヴロヴィッチ家はボスニアの貴族階級の上層に位置し、交易の中心地としてパレ周辺は繁栄しました。

オスマン支配

オスマン帝国のボスニア・ヘルツェゴビナ征服後、パレは「Bogazi Yumry」という名称で記録され、11地区の中心の1つとなりました。商業は盛んに行われましたが、18世紀には黒死病や大火に見舞われました。19世紀初頭まで「Pavli Vilayet」という名称が使われ、その後、現在のパレという名称に変わりました。

オーストリア支配

ベルリン会議でボスニアがオーストリア＝ハンガリー帝国の支配下となると、パレとその周辺地域では経済の変化が起こりました。天然資源の利用が促進され、パレは木材加工の地域中心地として発展しました。1907年には最初の小学校ができ、サラエヴォとヴィシェグラードを結ぶ鉄道が開通し、パレには最初の鉄道駅ができました。これにより、外国投資が促進され、新たな木材加工場が開業しました。

第一次世界大戦

1914年、セルビア・モンテネグロの軍隊がサラエヴォ周辺地域に侵攻し、モンテネグロの部隊はパレに入りましたが、その後撤退。オーストリアの部隊が再び街に入った後、パレで略奪や焼き討ちがあり、多くの住民が犠牲となりました。ゴラジュデでは、多くの難民がオーストリア軍によって強制収容所に連行され、過酷な状況に置かれました。

第一次世界大戦後

戦争終結後、ボスニアはユーゴスラビア王国に吸収され、パレは再び成長を遂げました。地域の天然資源、特に森林を基盤とした経済発展が進み、サラエヴォとの交通網が整備されました。1928年には自治体の中心となり、木材加工業が発展。文化的な活動も活発になり、学校が建設・改築され、コミュニティセンターが建てられました。1934年にはサッカークラブが設立され、スポーツも盛んに行われました。1940年当時、パレは小さくても整った町であり、多くの知識人や富裕層が別荘を建てました。

第二次世界大戦

1941年4月、ユーゴスラビアに対するファシストの攻撃により、パレはナチスの傀儡政権であるクロアチア独立国に編入されました。セルビア人系の企業は国有化され、文化センターは刑務所や拘置所として使用されました。多くのセルビア人が追放・処刑され、1941年夏には最初の大量虐殺が起こりました。地元住民は武装闘争を開始しましたが、占領軍によって鎮圧され、多くの人々が犠牲となりました。

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後、パレの町や自治体は地元住民の努力によってゆっくりと回復し、経済的な開発が再開しました。木材加工場が再建され、軍の整備施設が建設され、金属産業も発展しました。1980年代終わり頃には、多くの雇用が生まれました。

ボスニア紛争

1991年から1992年にかけて、緊張の高まりからボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が勃発。パレ地域は、スルプスカ共和国の行政的な中心となりました。

デイトン合意後

1995年12月14日のデイトン合意によってボスニア紛争は終結し、町は正常な状態に戻りました。スルプスカ共和国の憲法では、サラエヴォ（イストチノ・サラエヴォ）が首都とされていますが、行政上の首都はバニャ・ルカに移されています。

住民

1991年の国勢調査によると、パレ自治体の人口は16,310人であり、セルビア人が多数を占めています。紛争後、サラエヴォを脱出したセルビア人が移住し、人口が増加しました。

経済

地元の経済は観光を重要としており、近隣のヤホリナ山、トレベヴィチ山、イグマン山は1984年のサラエボオリンピックの会場として利用されました。ヤホリナスキーセンターには多くのリフトやスキートレイルがあり、多くの観光客が訪れます。また、狩猟協会がパレの狩猟場を運営しており、様々な狩猟が楽しめます。オルロヴァツ洞窟は、重要な考古学的な発見があり、観光客に公開されています。パレ自治体内には多くの伐採搬出や木材加工場があり、林業も重要な産業となっています。

姉妹都市

* スメデレヴォ（セルビア）

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