パロマ・ピカソ

パロマ・ピカソ：芸術一家に生まれた才能あふれるデザイナー

パロマ・ピカソ（Paloma Picasso, 1949年4月19日 - ）は、フランスとスペインをルーツに持つ服飾デザイナー、宝飾デザイナー、そして金細工師です。彼女は、20世紀を代表する芸術家パブロ・ピカソと、画家フランソワーズ・ジローの娘として生まれました。特に、ティファニーのジュエリーデザインや、自身の名を冠したシグネチャー香水「パロマ」などが広く知られています。

生い立ちと家族

アンナ・パロマ・ルイス＝ピカソ・イ・ジローとしてフランスのヴァロリスで生まれたパロマ。「パロマ」はスペイン語で「鳩」を意味し、平和の象徴として父パブロ・ピカソが生涯にわたって愛したモチーフでした。彼女自身も父の作品に度々登場し、『パロマとオレンジ』や『青の中のパロマ』などの作品にその姿を見ることができます。

彼女には、同母兄であるクロード・ピカソ、異母兄のパウロ・ピカソ、異母姉のマヤ・ウィドメーアー＝ピカソがいます。また、母フランソワーズ・ジローとリュック・シモンとの間に生まれた異父妹オーレリアもいます。

キャリアの始まり

パロマ・ピカソの宝飾デザイナーとしてのキャリアは、1968年にパリで服飾デザイナーとして活動していた頃に始まりました。蚤の市で見つけた石を使って制作したラインストーンのネックレスが、ファッション評論家の目に留まります。この成功がきっかけとなり、彼女は宝飾デザインの学校へ進学。1年後には、友人であったイヴ・サン＝ローランに自作を見せたところ、サン＝ローランはすぐに自身のコレクションに合わせるアクセサリーのデザインを依頼しました。1971年には、ギリシャのジュエリーメーカーであるゾロタス社でデザイナーとして活動しました。

ティファニーとのコラボレーションと香水「パロマ」

1980年、パロマ・ピカソはニューヨークのティファニーとのコラボレーションを開始し、彼女のキャリアは新たな段階を迎えます。また、香水にも関心を持ち、研究を重ねた結果、1984年にロレアルから自身の名を冠した香水「パロマ」を発表しました。彼女はこの香水を「自分のような強い女性のためのもの」と表現し、同年には「パロマ」ブランドのボディローション、パウダー、シャワージェル、石鹸なども発売されました。2010年には、ティファニーでのデザイナー就任30周年を記念したコレクションが発表され、その才能と影響力は色褪せることなく輝き続けています。

シグネチャーカラー「赤」

パロマ・ピカソを語る上で欠かせないのが、彼女の愛する色「赤」です。彼女の赤い口紅は「彼女の名刺」とも呼ばれ、その鮮烈な印象は多くの人々を魅了してきました。フランソワ・ナーズはパロマについて、「赤は彼女のトレードマークだ」「彼女のシグネチャーであり、このデザイナーの赤の時代を定義していると言えるかもしれない」と語っています。

幼少期から赤に魅了されていたパロマは、6歳の頃から赤い口紅を愛用していました。彼女の赤い口紅は、彼女を象徴するものとなり、「彼女の角張った横顔は、父親のキュービズムの傾向を思い出させる」とも評されました。目立ちたくない時には、あえて赤い口紅を避けることもあったそうです。

映画出演

1973年に父パブロ・ピカソが亡くなった後、パロマは一時的にデザインへの興味を失いました。同年、ポーランドの映画監督ワレリアン・ボロズウィックの映画『インモラル物語』に出演し、バートリ・エルジェーベト役を演じました。

私生活

1978年、パロマ・ピカソは劇作家・演出家のラファエル・ロペス＝カンビルと結婚しましたが、後に離婚。1999年には、オステオパシー医であるエリック・テヴェネと再婚しました。芸術やデザインに関心を持つテヴェネは、パロマにとって貴重な存在であり、彼女に様々な示唆を与えています。現在は、スイスのローザンヌとモロッコのマラケシュに拠点を置いています。

パロマ・ピカソは、その才能と美貌、そして揺るぎないスタイルで、ファッションとアートの世界に大きな足跡を残しました。彼女の作品は、これからも多くの人々に愛され、インスピレーションを与え続けることでしょう。

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