パンフィリア

パンフィリア（Pamphylia）は、小アジア南部、現在のトルコ領内に位置する古代の地域名です。具体的には、地中海とトロス山脈に挟まれた、リュキアとキリキアの間の地域を指します。北にはピシディアが隣接していました。ローマ時代には、その範囲は広がり、ピシディアを含む地域や、フリギア、リカオニアとの境界までを指すこともありました。地理学者プトレマイオスもこの広義の意味でパンフィリアという地名を用いています。現代においては、アンタルヤ県がおおむねパンフィリアに該当します。

歴史

パンフィリアが歴史に登場するのは、ヒッタイト帝国のトゥドハリヤ4世の時代です。彼が臣下とした王との間で交わされた条約に、その名が記録されています。この事実は、パンフィリアが古代オリエント世界の一角として、早い時期から歴史の表舞台に登場していたことを示しています。

その後、パンフィリアは周辺地域と同様に、リディア王国の支配下に入ります。リディア王国は、豊かな文化と経済力を持ち、小アジア西部に繁栄した王国です。パンフィリアは、リディアの支配を通じて、その文化的な影響を受けました。

リディア王国の滅亡後、パンフィリアはペルシア帝国、そしてギリシアの諸王国の支配を受け継ぎます。特に、アレクサンドロス大王の東方遠征以降は、ヘレニズム文化の影響が強まりました。パンフィリアの都市には、ギリシア風の劇場や神殿が建設され、ギリシア語が広く用いられるようになりました。

紀元前190年、セレウコス朝のアンティオコス3世がローマとの戦い（マグネシアの戦い）に敗北すると、パンフィリアはローマによってペルガモン王国の版図に組み込まれました。ペルガモン王国は、ローマの同盟国として小アジアで勢力を拡大し、パンフィリアもその影響下に入りました。ペルガモン王国の支配下で、パンフィリアは経済的に発展し、都市の建設が進みました。

その後、パンフィリアは短期間ではありますが、ガラティアに組み込まれた時期もありました。ガラティアは、中央アジアから移住してきたケルト人の一部族が築いた国家で、小アジア中部に勢力を持ちました。しかし、パンフィリアはすぐにローマの属州に復帰し、その後はローマ帝国の支配下で安定した時代を迎えました。

ローマ帝国の支配下では、パンフィリアは重要な交易拠点として栄え、多くの都市が繁栄しました。特に、アンタルヤ（アッタレイア）は、パンフィリアの中心都市として、重要な役割を果たしました。パンフィリアは、ローマ帝国の文化的な影響を強く受け、ローマ風の建築物や公共施設が建設されました。また、キリスト教が広まり、多くの教会が建てられました。

パンフィリアは、その歴史を通じて、様々な文化の影響を受け、多様な文化が融合した地域となりました。ヒッタイト、リディア、ペルシア、ギリシア、ローマ、そしてケルトといった様々な民族や国家が、パンフィリアの歴史に名を刻み、その文化的な遺産を今日に伝えています。

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