紀元前190年

紀元前190年は、古代ローマ史において重要な転換点となった年です。この年は、ローマ暦におけるローマ建国紀元564年にあたり、執政官にはルキウス・コルネリウス・スキピオ・アシアティクスとガイウス・ラエリウスが就任しました。

各地の紀年法

この年は、他の地域では以下のように記録されています。

干支: 辛亥
日本: 孝元天皇25年、皇紀471年
中国: 前漢の恵帝5年
朝鮮: 檀紀2144年
仏滅紀元: 355年
ユダヤ暦: 3571年 - 3572年

主要な出来事

この年は、地中海世界において多くの重要な出来事が起こりました。

ギリシア

ロドス島とペルガモンがローマと同盟し、セレウコス朝との間でエウリュメドン川の戦いが起こりました。セレウコス朝軍はカルタゴのハンニバルに率いられていましたが、ロドス島同盟軍が勝利し、ハンニバルは敗走しました。また、マケドニア王国のピリッポス5世は、ローマを支援するために貢物を送り、その結果、長年人質となっていた息子のデメトリオスが返還されました。

共和政ローマ

執政官スキピオ・アシアティクスは、ギリシアでセレウコス朝のアンティオコス3世と戦う指揮権を得て、マグネシアの戦いで勝利しました。この戦いでは、兄のスキピオ・アフリカヌスが副官として、外交・軍事面でスキピオ・アシアティクスをサポートしました。法務官のルキウス・アエミリウス・レギッルスは、ミョンネッススの戦いでアンティオコスの艦隊を撃破しました。前執政官のマニウス・アキリウス・グラブリオは、スキピオ・アシアティクスの帰国を待って凱旋式を挙行しました。一方で、前執政官のルキウス・アエミリウス・パウッルス・マケドニクスは、ルシタニア人に敗北しました。さらに、プラケンティアとクレモナに入植者が追加されました。

セレウコス朝

ローマからの脅威が増大する中、アンティオコス3世はローマの要求に基づいて交渉を試みました。ローマ側はトロス山脈の西側を手放すよう要求しましたが、アンティオコス3世がこれを拒否したため、リディアの平原でマグネシアの戦いが勃発しました。ローマ側が勝利し、セレウコス朝はギリシアにおける支配権を失いました。この敗北後、アルメニアのサトラップであるアルタクセス1世とザリアドレスは、セレウコス朝からの独立を宣言し、ローマの承認を得て、それぞれアルメニア王国と小アルメニア王国の王となりました。アルタクセス1世はセヴァン湖畔に首都アルタシャトを建設しました。また、エウメネス2世ソテルは、ローマ軍に加勢した見返りとして広大な領土を与えられ、ゲリボル半島とアナトリアの大部分の支配権を獲得しました。

芸術

この年、有名なサモトラキのニケ像が制作されました。この像は1863年に発見され、現在はパリのルーブル美術館に収蔵されています。

誕生

ヒッパルコス: ギリシアの天文学者、地理学者、数学者（紀元前120年没）
コルネリア・アフリカナ: スキピオ・アフリカヌスの娘、グラックス兄弟の母（紀元前100年没）

死去

ペルガのアポロニウス: ギリシアの天文学者、地理学者、数学者（紀元前262年生まれ）
曹参: 前漢創設功労者のひとり、相国（生年不明）



この年は、ローマの台頭と、それに伴う地中海世界の勢力図の変化が明確になった年でした。

参考資料

T. R. S. Broughton (1951). The Magistrates of the Roman Republic Vol.1. American Philological Association

関連項目

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