パンヤ科

パンヤ科（Bombacaceae）は、かつて植物分類において認識されていた科の一つです。クロンキスト体系や新エングラー体系といった分類法では、双子葉植物のグループとして扱われていました。しかし、その後の研究により、この科が多系統である、つまり共通の祖先を持たない複数の系統が混ざっていることが明らかになりました。

この結果、APG植物分類体系ではパンヤ科は廃止され、アオイ科（Malvaceae）に統合されることになりました。パンヤ科に属していた植物たちは、アオイ科のパンヤ亜科（Bombacoideae）やヘリクテレス亜科（Helicteroideae）などの下位分類群に分割されています。

パンヤ科に分類されていた植物は、主に世界の熱帯地域に分布する木本植物で、約30属180種ほどが存在します。日本には自生種はありません。これらの植物は、様々なユニークな特徴を持ち合わせており、その多様性が植物愛好家や研究者たちを魅了しています。

パンヤ科の植物には、種子の繊維が利用されるカポック（パンヤノキ）、観葉植物として人気のパキラ、非常に軽い木材として知られるバルサ、「果物の王様」と呼ばれるドリアン、そして特異な樹形を持つバオバブなどが含まれます。これらの植物は、いずれも人々の生活や文化に深く関わっており、その多様性が注目されています。

特徴

パンヤ科に分類されていた植物の一般的な特徴として、葉が落葉性である点が挙げられます。これは、乾季に葉を落とすことで乾燥から身を守る適応と考えられます。葉の形は、単葉のものと、手のひら状に複数の小葉がついた掌状複葉のものがあります。葉のつき方は互生です。

また、パンヤ科の植物の中には、バオバブやパキラ、トックリキワタのように、幹が膨らんで柔組織に水を貯めることができるものも多くあります。これは、乾燥した環境に適応するための特徴と考えられます。

花は大型の両性花で、一部には花弁がない種も存在します。花は多くの場合、5数性で放射相称であり、雄蕊は5本または多数あります。子房は上位に位置し、果実は蒴果であることが一般的です。

主な属

以下は、かつてパンヤ科に分類されていた主な属の一部です。

バオバブ属（アダンソニア属） Adansonia - バオバブ（有名な巨木）
キワタ属（ボンバックス属） Bombax - キワタ（紅棉、コットンツリー）
セイバ属（ケイバ属） Ceiba - カポック（パンヤ、パンヤノキ）、トックリキワタ
トックリキワタ属（コリシア属） Chorisia - トックリキワタ
ドリアン属 Durio - ドリアン（独特の香りと味の果実）
バルサ属 Ochroma - バルサ（非常に軽い木材）
パキラ属 Pachira* - パキラ（観葉植物として人気）

これらの属は、それぞれ特徴的な形態や生態を持ち、熱帯の多様な環境に適応しています。パンヤ科の植物は、その独特な形状、生態、利用価値から、植物学だけでなく、園芸、農業、文化など幅広い分野で関心を集めています。

現在ではパンヤ科という分類はなくなりましたが、その植物たちが持つ独自性は、これからも注目され続けるでしょう。

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