トックリキワタ

トックリキワタ（Ceiba speciosa）

トックリキワタは、アオイ科（旧分類ではパンヤ科）に属する落葉高木です。学名は Ceiba speciosa ですが、Chorisia speciosa というシノニムも存在します。ブラジルでは「パイネイラ」、南米スペイン語圏では「パロボラッチョ」や「ボトルの木」、ボリビアでは「トボロチ」などと呼ばれ、沖縄では「南米ざくら」と呼ばれることもあります。また、北米のカリフォルニア州などでは、トゲのない園芸品種「Majestic Beaty」が知られています。

形質

トックリキワタは、高さ20mに達する落葉高木です。若い木の樹皮は緑色で、幹には鋭いトゲが密生しています。成長すると樹皮は褐色に変わり、幹はトックリのように膨らみます。また、古い幹のトゲは落下します。ただし、最初からトゲのない系統も存在します。枝は3本ずつ放射状にほぼ水平に伸びます。

葉は、長めの葉柄から5〜7枚の小葉が出る掌状複葉で、縁は鋸状にギザギザしています。花は濃いピンク色で、基部は淡い黄色、まれに白色のものもあります。花の直径は12〜15cmほどで、赤紫色の系統も存在します。雌蕊は、花柱を囲む短い仮雄蕊塔と、その上に伸びる雌蕊筒の上縁にあります。

花は落葉後に、樹冠いっぱいに咲きます。原産地の南アメリカでは、乾季の終わりに開花します。実は楕円形で長さ約10cm、表皮は緑色で、熟すとひび割れて実の中の綿が飛び出します。実の中には、カポックなどパンヤ科の他の種類と同様に、綿に包まれた多数（200個前後）の種子があります。種子の表面は黒褐色です。

用途

日本では、観賞用として珍重され、主に熱帯植物園で栽培されています。また、南西諸島では街路樹や公園樹として導入されています。実から採れる綿は、枕、座布団、クッションなどの詰め物として利用されるほか、比重が軽く防水性があるため、救命具の詰め物としても使用されます。また、種子からは植物油が採取できます。

分布

原産地は、ブラジル中南部、ボリビア、パラグアイ、アルゼンチンなど、南アメリカ中南部です。観賞用として北米などでも植栽されています。日本では、1964年に沖縄県に導入されました。

栽培

トックリキワタは、土質を選びませんが、乾燥気味の土壌を好み、多湿の土壌を嫌います。排水の良い土壌が適しており、直射日光を好みます。日陰では開花しません。繁殖は実生のほか、挿し木、取り木、接ぎ木などで行います。種から育てた場合は開花まで約10年、その他の方法では約2年かかります。

日本での栽培

日本で最初にトックリキワタを栽培したのは、当時アメリカ軍の軍政下にあった沖縄です。1964年、琉球政府の農業技術者であった天野鉄夫が、ボリビアのオキナワ移住地でのボリビア移住10周年記念式典に参加した際、ボリビアから種子を持ち帰ったことがきっかけです。

帰国後、天野は自宅で種子から苗木を育て、1970年に初めて開花に成功しました。その後、沖縄県各地に植樹され、沖縄では「南米ざくら」などと呼ばれ、観賞樹木として親しまれています。沖縄では10月下旬から12月上旬に花が咲きます。沖縄では結実が難しいですが、挿し木や取り木、接ぎ木などの人為的な方法で繁殖が行われています。

沖縄都市モノレール線のおもろまち駅には、導入時の樹木として、天野が自宅で栽培した「天野株」が現存しています（北緯26度13分26.5秒 東経127度41分52.9秒）。

画像

[トックリキワタの画像1]
[トックリキワタの画像2]
[トックリキワタの画像3]
[トックリキワタの画像4]
[トックリキワタの画像5]
[トックリキワタの画像6]
[トックリキワタの画像7]
[トックリキワタの画像8]

脚注

注釈

出典

参考文献

坂崎信之、尾崎章『日本で育つ熱帯花木植栽事典』アボック社、1998年。ISBN 4-900358-46-0。 NCID BA35688960。
天野鉄夫『図鑑　琉球列島有用樹木誌』沖縄出版、1989年。 NCID BN04073114。
* 天野鉄夫「私の半生と研究」『史料編集室紀要』第13巻、沖縄県立図書館史料編集室、1988年3月、2-26頁、NAID 40004698350。

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