ヒガラ

ヒガラについて

ヒガラ（学名: Periparus ater）は、スズメ目シジュウカラ科に属する小型の鳥類です。その愛らしい姿と、特徴的な鳴き声で、多くの人々に親しまれています。日本国内では、北海道から九州まで、ほぼ全域に分布しており、身近な野鳥として知られています。

分布

ヒガラは、ユーラシア大陸の広範囲に分布しており、ヨーロッパからアジアにかけて広く生息しています。また、アフリカ北部のアルジェリア、チュニジア、モロッコなどにも分布が見られます。日本では、亜種ヒガラ（Periparus ater insularis）が、北海道、本州、四国、九州に周年生息しています。これらの地域では、留鳥または漂鳥として観察されます。

形態

ヒガラは、全長約11cm、翼開長約17cmと、非常に小型の鳥です。スズメ（約14cm）やコガラ（約13cm）よりも小さく、日本のカラ類の中では最小種です。体色は、上面が青みがかった灰色や黒褐色、下面が淡褐色で覆われています。頭部は黒い羽毛で覆われており、短い冠羽が特徴的です。頬から後頸にかけて白い斑紋がありますが、喉から胸部の黒い斑紋によって分断されており、胸部の明色部とは繋がっていません。翼は灰黒色で、中雨覆の先端に白い斑紋があり、静止時には2本の白い筋模様（翼帯）に見えます。嘴や足は黒色で、雌雄同色です。卵は白い殻で覆われ、淡紫色や赤褐色の斑点が入っています。

生態

ヒガラは、主に平地、山地、亜高山帯の針葉樹林に生息しています。冬季になると、より標高の低い場所へ移動することがあります。秋季から冬季にかけては、群れを形成して生活し、コガラなどの他のカラ類や、キクイタダキなどと混群を形成することもあります。食性は雑食で、昆虫、クモ、果実、草木の種子（特にアカマツやカラ[[マツ]]などのマツ類の種子）などを食べます。樹木の枝先を動き回り、樹上で採食を行うことが多いです。また、木の幹の隙間などに種子を貯蔵する行動も見られます。

繁殖形態は卵生です。繁殖期には、ペアで縄張りを形成します。巣は樹洞やキツツキの古巣の中に作られ、苔類、獣毛、羽毛などが敷き詰められます。日本では、5月から7月にかけて、1回に5～8個の卵を産みます。メスのみが抱卵し、抱卵期間は約14～18日間です。雛は孵化してから約16～18日で巣立ち、巣立ち後約2週間で独立します。オスは、シジュウカラよりも速いテンポで「ツピン ツピン ツピン」と高木の上でさえずります。

人間との関わり

ヒガラは、樹洞に巣を作るため、巣箱を利用して観察や保護を行うこともあります。また、北海道室蘭市では、市の鳥として指定されており、市民に親しまれています。

分類

ヒガラは、以下の亜種に分類されています。

Periparus ater britannicus (グレートブリテン島とアイルランド島北東部)
Periparus ater hibernicus (アイルランド島の北東部以外)
Periparus ater ater (スカンジナビア半島、ヨーロッパ北東部からシベリア、カムチャッカ半島、日本の北部、大韓民国、中国東北部、モンゴル国北東部)
Periparus ater abietum (ヨーロッパ西部・中部・南東部とアナトリア半島)
Periparus ater vieirae (イベリア半島)
Periparus ater sardus (コルシカ島とサルデーニャ島)
Periparus ater atlas (モロッコ)
Periparus ater ledouci (アルジェリア北部とチュニジア)
Periparus ater cypriotes (キプロス)
Periparus ater moltchanovi (クリミア半島南部)
Periparus ater michalowskii (コーカサスの南西部以外と南コーカサス中部・東部)
Periparus ater derjugini (トルコ北東部とコーカサス南西部)
Periparus ater eckodedicatus (中国西部)
Periparus ater gaddi (アゼルバイジャン南東部とイラン北部)
Periparus ater chorassanicus (トルクメニスタン南西部とイラン北東部)
Periparus ater phaeonotus (イラン南西部)
Periparus ater rufipectus (カザフスタン南東部と中国北西部)
Periparus ater martensi (ネパール中部のガンガク川流域)
Periparus ater melanolophus (アフガニスタン東部とパキスタン北西部からヒマラヤ山脈北西部)
Periparus ater aemodius (ヒマラヤ山脈東部からブータン北部)
Periparus ater pekinensis (中国の中央東部)
Periparus ater insularis (ヒガラ、千島列島南部と日本)
Periparus ater kuatunensis (中国南東部)
Periparus ater ptilosus (台湾)

種の保全状況評価

国際自然保護連合（IUCN）により、2010年からレッドリストの軽度懸念（LC）に指定されています。日本では、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けています。

絶滅危惧II類 - 長崎県
準絶滅危惧 - 山口県
地帯別危惧 - 埼玉県


ヒガラは、私たちの身近な場所に生息する美しい野鳥です。自然の中で見かけたら、その愛らしい姿をそっと観察してみてください。

参考資料

高木清和『フィールドのための野鳥図鑑-野山の鳥』山と溪谷社、2000年8月。
叶内拓哉『絵解きで野鳥が識別できる本』文一総合出版、2006年3月。
叶内拓哉、安部直哉『山溪ハンディ図鑑7　日本の野鳥』（第2版）山と溪谷社、2006年10月1日。
大橋弘一『庭で楽しむ野鳥の本』山と溪谷社、2007年11月1日。
藤本和典『新 庭に鳥を呼ぶ本』文一総合出版〈BIRDER SPECIAL〉、2009年11月。
中川雄三（監修） 編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年2月20日。
真木広造『名前がわかる野鳥大図鑑』永岡書店、2012年4月10日。

関連項目

シジュウカラ科
シジュウカラ属
カラ類
日本の野鳥一覧

外部リンク

The IUCN Red List of Threatened Species
BirdLife International

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