ヒシマサル (1989年生)

ヒシマサルII：輝ける一瞬と、種牡馬としての影

1989年2月20日生まれのヒシマサルIIは、日本の競走馬、そして種牡馬として、華々しい活躍と苦悩の両面を経験した馬です。1955年生まれの同名馬が存在するため、血統表などでは「II」と表記されることもありました。 この競走馬は、その名を冠した父馬への敬愛、そして担当調教師への敬意が込められた命名でした。

デビューまでの道のり

阿部雅一郎氏をオーナーとするヒシマサルIIの誕生には、家族の歴史と再起への強い意志が背景にあります。阿部氏の父、雅信氏は名馬主として名を馳せていましたが、雅一郎氏への世代交代後、期待された活躍は得られず、新たな血統導入が急務でした。そんな中、1991年春のバレッツセールで出会ったのが、セクレタリアト産駒の3歳馬でした。公開調教でのその動きに魅せられた雅一郎氏は、約32万5000ドルで落札し、「ヒシマサル」と命名しました。この名前には、雅信氏にとって思い出深い馬へのオマージュと、栗東トレーニングセンターの調教師である佐山優氏への敬意が込められています。佐山氏は、この馬の気品ある容貌と優れた馬格に惚れ込み、落札を決定したと語っています。

競走馬時代：華麗なる走り、そして惜敗

1991年11月、京都競馬場でのデビュー戦は4着と惜敗しましたが、続くレースでは圧勝。1992年には、武豊騎手を鞍上に迎えた寒梅賞で勝利を収め、その潜在能力の高さを示しました。武豊騎手は、その乗り味を「スポーツカーを操るよう」と表現し、その才能に驚嘆しています。その後、田島信行騎手とのコンビで、きさらぎ賞、毎日杯、京都4歳特別とGIIIレースを3連勝。しかし、当時のクラシックレースへの外国産馬の出走制限により、クラシック路線とは別の道を歩むことになりました。皐月賞や日本ダービーを制したミホノブルボンとの対決が期待されましたが、実現することはありませんでした。

その後も、幾度となく重賞レースに挑戦し、オースミロッチやレガシーワールドといった強豪と競り合いましたが、勝利には届かず。ジャパンカップでは5着と健闘するも、有馬記念では9着と結果を残せませんでした。1993年には屈腱炎を発症し、事実上引退となりました。

種牡馬時代：期待と現実のギャップ

引退後は種牡馬となりましたが、その血統背景から、優秀な繁殖牝馬を集めることができませんでした。結果として、産駒の活躍は期待を大きく下回り、重賞勝ち馬どころかオープン入りした馬も輩出することができませんでした。ヒシアマゾンへの種付けは話題を呼びましたが、その仔も中央競馬で勝利を掴むことはできませんでした。2000年には種牡馬を引退し、晩年はうらかわ優駿ビレッジAERUで繋養されました。2018年3月6日、老衰のため死亡しました。

血統と未来

ヒシマサルの母系には、フランスで重賞2勝を挙げた姉や、アメリカでG1レースで2着の実績を持つ母の姉など、優秀な馬がいます。ヒシマサルの活躍後、これらの近親馬が日本に輸入されましたが、今のところ目覚ましい活躍はみられません。

ヒシマサルIIは、その短くも華麗な競走馬生活と、種牡馬としての苦闘を通して、競馬史に名を刻みました。その生涯は、競走馬の栄光と挫折、そして血統の複雑さを物語る、一つの象徴と言えるでしょう。

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