クロベ

クロベ（黒檜）

クロベ（学名: Thuja standishii）は、ヒノキ科クロベ属に分類される常緑針葉樹です。別名ネズコ（鼠子）とも呼ばれ、この名前が標準和名として用いられることもあります。日本固有種であり、本州と四国の山地帯から亜高山帯に分布しています。材木は建築用材として利用されるほか、木曽五木の一つとしても知られています。

特徴

クロベは、高さ35メートル、直径1.8メートルに達する高木です。樹冠は円錐形をしていますが、岩場や風の強い場所では匍匐性になることもあります。樹皮は赤褐色で光沢があり、縦に薄く剥がれます。小枝は扁平で、鱗片状の葉が十字対生しています。葉は長さ2～4ミリ[[メートル]]で、ヒノキより大きくアスナロより小さいサイズです。葉の表面は深緑色、裏面は緑白色で、気孔帯は目立ちません。

雌雄同株であり、5月に開花します。雄花は紫黒色で小枝の先端に付き、雌花は黄緑色で卵球形です。球果は10～11月に成熟し、オレンジ色を帯びた広卵形または楕円形をしています。果鱗は瓦状に重なり、各果鱗には2～3個の種子があります。種子は褐色で両側に狭い翼があります。

葉の精油成分としては、フェランドレン、β-ピネン、リモネンなどが報告されています。材にはトロポロン化合物が含まれ、β-ツヤプリシンも少量含まれています。

分布と生態

クロベは、日本固有種であり、本州（秋田県から中部地方）と四国の山地帯上部から亜高山帯に分布します。尾根や岩場に生育し、シラビソ、キタゴヨウ、コメツガ、ヒノキなどと混生することがあります。陰樹であり、成長はやや遅いです。植林されることはほとんどありません。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、近危急種（NT）に指定されています。日本では、絶滅種に指定されている地域や、絶滅危惧種に指定されている地域があります。

希少個体群保護林として、「太鼓山ネズコ遺伝資源」と「山王海ネズコ遺伝資源」が指定されています。また、地方自治体指定の天然記念物も存在します。

人間との関わり

クロベの材は、耐朽性が高く加工しやすい性質から、建築材や家具、船舶、器具などに利用されています。古くは樹皮が火縄に使われていました。木曽谷では、ヒノキ、サワラ、アスナロ、コウヤマキとともに木曽五木の一つとされています。クロベで作られた下駄は、中信地方の特産品として知られています。

しかし、材にはトロポロン化合物が含まれているため、木材加工者にアレルギーを引き起こすことがあります。また、材の蓄積量は少なく、構造材にはあまり向いていません。

名称の由来

クロベの名前の由来は、葉裏の気孔帯が目立たないために、葉裏の色が暗く見えることから「黒檜」と呼ばれ、それが転じたという説や、材がヒノキに比べて黒っぽいからという説などがあります。別名のネズコは、心材がねずみ色であることに由来します。

分類

クロベは、クロベ属に分類され、クロベ属には他にアメリカネズコ、ニオイヒバなどが含まれます。クロベは、枝葉裏面の気孔帯が目立たないことや、球果の果鱗が扁平である点で、他の類似種と区別できます。

脚注

注釈

出典

関連項目

類似種：ヒノキ、サワラ、アスナロ
木曽五木：クロベ、ヒノキ、サワラ、アスナロ、コウヤマキ
黒書院

外部リンク

Plants of the World Online
The Gymnosperm Database
コトバンク - クロベ

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