ヒメヌマエビ

ヒメヌマエビ (姫沼蝦)

概要

ヒメヌマエビ（学名: Caridina serratirostris）は、エビ目ヌマエビ科に属する淡水エビです。主にインド洋および西太平洋の熱帯および亜熱帯地域に広く分布しています。ヒメヌマエビには、コテラヒメヌマエビ（C. celebensis）といった近似種も存在し、時には亜種として扱われることもあります。

特徴

このエビの成体は、オスが約15mm、メスが約25mmと、比較的小柄な体型をしています。額角は長く、前方に水平方向に伸び、鋸歯状の形状を持ちます。この構造は、上縁の歯が額角から頭胸甲の背面まで続いている点で特に目を引きます。体型は丸みを帯びた紡錘形をしており、歩脚は細く短いため、より機敏な動きが可能です。

複眼は赤色で、体には明確に分かれた有色部と白色部が存在しており、模様には二通りのパターンがあります。背中には太い縦線が入ったり、体に数本の横線が現れるものもあります。特に横しまの個体には、規則的で太い模様のものも見られ、色とりどりの体色は赤、紫、茶色、緑黒色、黒など多様性に富んでいます。ただし、飼育下ではこの色彩が灰褐色に褪色することもあります。

また、ヒメヌマエビは複眼の後に5つ以上の鋸歯があることで、ミナミヌマエビやミゾレヌマエビなどから容易に区別できます。トゲナシヌマエビのメスに似た個体も存在しますが、ヒメヌマエビとは異なり、額角が短く体が大型であるため識別が可能です。

生態

ヒメヌマエビは、日本からポリネシア、東南アジア、オーストラリア北部、モーリシャス、マダガスカルまでと広範囲に生息しています。特に日本では、千葉県以南の暖流に面した地域に多く分布し、南西諸島では比較的数が多く見られます。一方で、九州や四国、本州西部では生息地が点在しています。

このエビは、暖流が流れる海に接した川の下流域に生息しており、流れが速い上流や中流域にはあまり見られません。時にはトゲナシヌマエビやテナガエビ、モクズガニと一緒に湧水のある海岸にも姿を見せることがあります。水質が悪化していたり、河口に堰があるエリアではヒメヌマエビは生息しません。

また、流れが緩やかな浅瀬に生息し、岩石や流れ着いた落ち葉、ゴミなどの間に隠れています。特に水が清浄で、日光があまり当たらず、夏でも水温が低く保たれる場所に多く見られます。隠れる性質が強く、岩や落ち葉をどかすとすぐにその陰に逃げ込むことが多いです。食性は雑食で、藻類やデトリタス、生物の死骸などを食べますが、他のヌマエビ類に比べてあまり多くは食べない傾向があります。

繁殖は春から夏にかけて行われ、メスは交尾後に小さな楕円形の卵を産むと、腹脚で抱え孵化するまで保護します。その際、孵化した子供はゾエア幼生の形態をもち、川の流れに乗って海へ下ります。この幼生期ではデトリタスやプランクトンを捕食しながら成長し、稚エビへと変態して再度川を遡ることが特徴です。

人との関わり

日本の日常では、特に九州以北ではヒメヌマエビの生息地は限られ、個体数も少なくなっています。これにより、各都道府県や市町村で絶滅危惧種に指定されることもあります。また、観賞用に利用されることが一般的ですが、長期にわたる飼育は難しいとされています。ヒメヌマエビは、昼間はほとんど動かずに物陰に隠れるため、一般的に「コケ取り」としての役割も果たさないことが多いです。

幼生期に海水を必要とするため、彼らを育てるには慎重な飼育が要求されることがあり、適切な環境を整えてあげる必要があります。

もう一度検索