ヒメマサキ

ヒメマサキ（姫柾木）

ヒメマサキ（学名：Euonymus boninensis）は、ニシキギ科に属する常緑の低木または小さな高木です。この植物は、主に小笠原諸島に自生しており、その美しさと特徴的な形状から注目される存在です。

特徴

ヒメマサキは、樹高が通常2メートルから4メートルほどになります。幹の樹皮は黒褐色で、若い枝は緑色をしており、表面は滑らかな質感となっています。葉は年に1-4対が対生し、場合によっては輪生状につくこともあります。葉の形状は卵円形または狭倒卵形で、長さは2.5センチメートルから8センチメートル、幅は1.2センチメートルから5センチメートルです。葉の先端は円いかやや尖り、基部はくさび形または円形で、葉柄に流れる形をしています。さらに、葉の縁には不明瞭な粗い鋸歯が見られます。

ヒメマサキは、他のマサキと比べると葉が薄く、質感や光沢が少ないのが特徴です。葉柄の長さは3センチメートルから7センチメートル程度です。春には、約4月に花を咲かせます。この時期には、今年枝の下部の葉腋や芽鱗痕のわきから、長さ3センチメートルから4センチメートルの集散花序が上向きに伸びていきます。総花柄の長さは2センチメートルから3センチメートルで、直径約5ミリメートルの黄緑色の花が7個から15個つきます。花柄は2ミリメートルから3ミリメートルの長さを持ち、萼裂片は4個あり半円形で、直径は約1.5ミリメートルです。また、花弁は4枚で楕円形、長さは約3ミリメートルです。雄蕊は4本、長さはおおよそ2ミリメートルで、花柱は1本、長さは約1ミリメートルです。

果実は冬季に熟し、蒴果となります。果実は直径約8ミリメートルから10ミリメートルの扁球状で、緑褐色から始まり、熟すと4個に裂け、内部の橙赤色の種子が顔を出します。

分布と生育環境

ヒメマサキは小笠原諸島の固有種であり、聟島、父島、母島、姉島、妹島に分布しています。これらの島々では、主に低木林や海岸近くの湿った場所に自生しており、日当たりの良い中腹地の林縁や潮風が当たる稜線でも見られます。

和名・学名の由来

この和名は、著名な植物学者である牧野富太郎によって名付けられました。彼は、日本本土のマサキに比べてヒメマサキの葉質が薄く、厚みや光沢がないことからこの名前を付けたとされています。また、学名の種小名boninensisは、小笠原諸島にある無人島の名前から由来しています。

保全状況

ヒメマサキは環境省のレッドリストで、絶滅危惧II類（VU）に指定されています。生息地が限られているため、現地保全の重要性が高まっています。

参考文献

• - 佐竹義輔他編『日本の野生植物 木本II』、1989年、平凡社
• - 牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館
• - 米倉浩司・梶田忠（2003-）「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）
• - 生物多様性システム 環境省

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