ハイイヌガヤ

ハイイヌガヤ（Cephalotaxus harringtonia var. nana）

ハイイヌガヤは、イヌガヤ科イヌガヤ属に分類される常緑性の低木であり、針葉樹に属します。別名として、アイヅイヌガヤ、アイズイヌガヤ、エゾイヌガヤなどの名で呼ばれることもあります。

特徴

ハイイヌガヤは、基本変種であるイヌガヤ（Cephalotaxus harringtonia）が、特に北海道や本州の日本海側の多雪地帯という特有の環境に適応した変種です。積雪への適応として、幹の下部が地面を這うように生長し、枝は斜め上方向に伸びるのが特徴です。樹高は通常1メートルから2メートル程度にまで成長します。

葉は線形で、長さは約25ミリメートルから35ミリメートル、幅は約2.5ミリメートルから3ミリメートルです。葉の表面は深緑色で光沢があり、裏面は粉白色を帯びています。また、裏面には気孔帯が存在します。葉の先端は尖っていますが、触れても痛くはありません。

花期は5月から6月にかけてで、雌雄異株です。雄花は黄色、雌花は緑色をしています。種子は10月頃に赤く熟し、外種皮は食用となります。

属名の「Cephalotaxus」は、「頭状の花をつけるTaxus（イチイ属）」という意味を持ち、種小名の「harringtonia」は人名に由来します。変種名の「nana」は、「小さい」という意味を持っています。

分布と生育環境

ハイイヌガヤは、北海道西南部から本州の日本海側（青森県から山口県にかけて）、そして四国の石鎚山にかけて分布しており、多雪地の林床に自生しています。ユキツバキ、ヒメモチ、ヒメアオキ、エゾユズリハ、ツルシキミなど、日本海要素を持つ常緑の地這植物と共に、ブナ林などの林床で見られることがあります。また、イチイ科（またはイヌガヤ科）カヤ属のカヤの日本海型要素の変種であるチャボガヤ（Torreya nucifera var. radicans）と混生することも珍しくありません。

参考文献

佐竹義輔他編『日本の野生植物 木本I』(1989) 平凡社
福嶋司・岩瀬徹編著『図説 日本の植生』(2005) 朝倉書店

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