ヒュー・ロー

ヒュー・ロー（Sir Hugh Low、1824年5月10日 - 1905年4月18日）は、イギリスの植民地行政官であり、博物学者としても知られています。彼はマレーシアのラブアンで様々な役職を歴任し、その卓越した行政能力により、マレー地域における初期の植民地統治を成功に導いた人物として評価されています。また、博物学者としての顔も持ち、キナバル山の頂上台地に到達した記録を残し、その後の研究に大きく貢献しました。

生い立ちと初期のキャリア

ローはロンドンのアッパー・クラプトンで、スコットランド人の園芸家の息子として生まれました。幼少期から、父親が経営する種苗園で働き、植物に関する深い知識を身につけました。20歳になると、父親の命により東南アジアに派遣され、植物採集の任務に従事しました。シンガポールを拠点に活動を開始した後、サラワク王国の初代国王となったジェームズ・ブルックの元で働くことになります。サラワクの地理や文化に精通し、その知識を活かして帰国後にサラワクに関する著作を執筆しました。

ラブアンでの活躍

1847年、ローはブルックによって、ラブアンに新設されたイギリス植民地の知事およびボルネオ島領事に任命されました。同時期に、法律家でジャーナリストのウィリアム・ネイピアも要職に就任し、ローはネイピアの娘と結婚しました。1850年から1877年まで、警察長官の職も務めました。また、1851年3月にはキナバル山に登山し、生涯で3度、この山を訪れています。

ペラ州での行政

1877年4月、ローはマレー半島に移り、政情が不安定だったペラ州の4代目Resident（行政官）に就任しました。初代Residentが暗殺された後、内乱が発生し、マレー人の役人が殺害または亡命するという混乱の中での着任でした。ローは、現地人の土地に対する権利を尊重するという原則を守り、8年間の統治期間中に奴隷制を廃止し、マレー半島初の鉄道を建設するなど、インフラ整備にも力を注ぎました。

ペラ州での12年間で、ローは平和的な政権を確立し、主要なマレー人、中国人、イギリス人の指導者から成る国務院を設立しました。また、地元の有力者を積極的に登用することで、安定した統治を実現しました。

産業振興への貢献

ローは有用植物の導入にも熱心に取り組み、ゴム、コーヒー、黒胡椒、茶などの実験栽培を行いました。1882年にはクアラ・カンサーで7本のゴムの木を育て、これがマレーシアにおけるゴム栽培の始まりとなりました。この功績は、マレーシアの経済発展に大きく貢献しました。

その他業績

王立アジア協会の海峡支部報（Journal of the Straits Branch of the Royal Asiatic Society）の創刊を後援するなど、学術分野への貢献も行いました。これらの業績が評価され、1879年に聖マイケル・聖ジョージ勲章（CMG）を受勲し、その後1883年にKCMG、1889年にGCMGを受勲しました。1889年にResidentの職を辞任しました。

博物学者としての功績

ローは博物学者としても卓越した業績を残しており、多くの動植物を収集しました。彼が収集した標本の中には、後に新種として記載されたものも多く、彼の名前が学名に献名された動植物は多数にのぼります。植物では、ナガバクワズイモ（Alocasia lowii）、シビンウツボカズラ（Nepenthes lowii）、ラン科のパフィオペディルム・ローウィ（Paphiopedilum lowii）などがあります。動物では、ハネオツパイ科の動物Ptilocercus lowiiや、チョウ目の昆虫Papilio lowiなどが献名されています。

ヒュー・ローは、行政官としてだけでなく、博物学者としても多大な貢献をした人物であり、その功績は今日でも高く評価されています。

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