ヒリュウシダ属

ヒリュウシダ属（Blechnum）

ヒリュウシダ属 Blechnum は、シシガシラ科に属するシダ植物の一群です。単羽状複葉の葉を持ち、胞子嚢群が裂片の中肋に沿って伸びるのが特徴です。世界中に約200種が知られており、多様性に富んだ属として知られています。

特徴

ヒリュウシダ属の植物は、以下のような特徴を持ちます。

根茎: 直立またはわずかに匍匐し、多数の葉を密生させます。根茎には幅が狭く、縁が滑らかな鱗片が見られます。一部の種は木生シダとして成長します。
葉: 多くの種は単羽状複葉ですが、単葉を持つものも存在します。葉の質感はやや厚手で、側羽片は細長く、縁は滑らかです。主軸や羽片の軸には溝がありますが、これらの溝は互いに連結していません。
葉脈: 葉脈は遊離しているか、胞子嚢群で繋がり合っています。
栄養葉と胞子葉: 栄養葉と胞子葉が区別できる種と、区別できない種があります。区別できる場合、胞子葉の方が羽片の幅が狭いです。
胞子嚢群: 細長く伸びた形をしており、中肋に沿って伸びます。苞膜は胞子嚢群を覆い、細長く、中肋の反対側で葉に繋がり、中肋に向かって裂開します。

分布

ヒリュウシダ属は、シシガシラ科の中で最も多様性に富んでおり、その大部分が南半球に分布しています。生育場所も様々で、熱帯から温帯、さらには寒冷地まで、幅広い環境に適応しています。

ニュージーランドに自生する B. nigrum は葉の長さが10cmにしかなりませんが、チリのファン・フェルナンデス諸島に固有のソテツバシシガシラ B. cycadifolium は木生シダであり、高さ1.5m以上、茎の径は20cmに達するものもあります。

分類

ヒリュウシダ属には約200種が知られています。かつては、栄養葉と胞子葉の二形が明らかな種のみをシシガシラ属 Struthiopteris として分類する考え方もありましたが、現在ではヒリュウシダ属に含めるのが一般的です。

日本には以下の5種が自生しています。

Blechnum ヒリュウシダ属
B. orientale ヒリュウシダ
B. niponicum シシガシラ
B. hancockii ハクウンシダ（疑問あり）
B. amabile オサシダ
B. castaneum ミヤマシシガシラ

このうち、ヒリュウシダのみが葉に二形が見られません。

利用

ヒリュウシダ属の植物は、食用や薬用、観賞用として利用されています。

食用: ニュージーランドでは B. capence の新芽を蒸し焼きにして食べ、オーストラリアのアボリジニはヒリュウシダなどの根茎を食料としていました。
薬用: 東南アジアではヒリュウシダが虫下しや膀胱炎の薬として使用されていました。同様に薬用として利用された種は他にもあります。
観賞用: ブラジルシシガシラ B. brasiliense やギッブム B. gibbum は、観賞用としてよく知られています。特にギッブムは木生シダとなり、高さ90cmに達することもあります。




参考文献

岩槻邦男編、『日本の野生植物 シダ』、(1992)、平凡社
田川基二、『原色日本羊歯植物図鑑』、(1959)、保育社
栗田子郎、「シシガシラ科」：『朝日百科 植物の世界 12』。(1997)、朝日新聞社：p.35-38
高林成年、『観葉植物［特装版］』、(1997)、山と渓谷社

もう一度検索